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渦巻く滄海 紅き空 【下】
三十五 かわき
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人の気配どころか、生き物の気配もない。
大方、九尾の力の一端に怯えて、ここら一帯の生き物達は遠くへ逃げ去ったのだろう。

(……ナル……)

その力を宿し、小さな九尾となって暴れた彼女を懸念しながら、彼は────うずまきナルトは軽く、地面を蹴った。


カサカサにかわいた地面。
今や、草一本も生えていない乾き切った土が、不意に、ボコりと蠢いた。


「あ────…疲れた」

ボコボコ…と盛り上がった地中から這いあがった彼は、大きく伸びをする。
凝り固まった身体を解すように柔軟するその腕は、六本。


「やれやれ…【土遁の術】でずっと地中で息を潜めるのも楽じゃないぜよ」
「まったくだ」

鬼童丸に同意を返したのは、地面。否、同じように地中から這いあがった右近が溜息をつく。
右近の溜息を間近で聞きながら、左近は身体中に纏った土をパンパンと叩き落とした。



「待て」

死んだふりをするように命じていたナルトは、生きていた鬼童丸と右近/左近に制止の声をかける。
静かに近寄ったナルトは戸惑う二人に、細く長い指を伸ばした。

服裾から、ヤマトが仕込んだ【送信木】を無造作につかむ。青く澄んだ双眸を細め、ナルトは指先で種をパキッと握り潰した。





「また会えて嬉しいよ。右近・左近…鬼童丸」


握り拳をそっと開く。

粉々となった発信機である種がパラパラ…と、生きている三人の間をすり抜け、やがて、かわいた大地に散っていった。
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