大きな罪
依頼
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りがとう。じゃあ、コーヒーをお願いします。」
玲は笑みを返して、台所に向かった。
「インスタントで、ゴメンね。」
「いや、大丈夫だよ。」
彼女の表情は見えないため、考えていることが読み取れない。玲は澄み渡る湖様な人だが、心の奥深い所までは、のぞけないような人だ。
「おまたせ。どうぞ、宏。」
「ありがとう。」
宏はそれを笑顔で受け取り、飲み始めた。玲も一緒に、飲んでいた。
「パソコンも点いたし、あの写真の謎でも解くかな。」
「僕に何か、手伝えることはある。」
「そうだな。送信されてきた絵は、クロード・モネの『積みわら、霜の朝』っていう作品なの。だから、彼の作品の画像を集めて欲しいの。」
「わかった。」
携帯を開こうとしたとき、玲が言った。
「このパソコンを使った。携帯だと大変でしょう。」
彼女が指差したのは一台のノートパソコン。こんなものを使っていいのだろうか。
「使っても、大丈夫だよ。」
「ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えて。」
僕はすでに点いているパソコンに向かい、インターネットを開いた。そしてモネに関する資料を集めた。
「調子はどう。」
「順調だよ。玲の方は。」
「まあまま。」
玲の方を見ると、二枚の画像を比較しているところだった。彼女が言った通り、絵は二枚ともクロード・モネの作品だった。つまりは、二枚のうちぢちらかが贋作だ。
「これは。」
「ええ。どちらかが贋作よ。しかも高度な。」
素人にはまず、どちらが本物なのか分からない。玲はその二枚を見極めていた。
「わかりそうかい。」
「左が偽物。右が本物。」
「どうして。」
「宏が集めた画像と、右の画像のタッチは似ている。だけど左は似せているけど、若干違う箇所がある。」
凄い。こんな短時間で、不自然な箇所を見抜くなんて。
「さてと、返答しないと。」
玲は携帯を開き、依頼者に返信した。すると待っていたかのように、返事が来た。メールを見ていた彼女の顔が、みるみるうちに青ざめていった。
「どうした、玲。」
彼女の携帯を覗き込み、書かれていた言葉を見て寒気がした。
「ご名答。」
彼女は急いで返信をしたが、エラーになるだけだった。
「姿無き犯罪者。」
「何それ。」
「ネット上で密かに噂されているの。まさかとは思っていたけど、油断した。」
苦虫を潰すような複雑な表情で、パソコンの前に座っていた。机の上にある時計を見て、何かを思い出したように携帯を開き、どこかに電話をかけはじめた。
「もしもし、お母さん。今日は、こっちに泊まるから。うん、大丈夫だよ。仕事が忙しくてね。わかった、お母さんもね。またね。」
通話が終了したようで、玲は携帯を閉じた。
「今日は帰らないの。」
「うん。調べたいことが、山程あるから。」
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