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レーヴァティン
第百五十話 北進その九

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「来てるわ」
「湖峡を渡ってか」
「来てるで」
「向こうも必死だな、じゃあな」
「そや、この要塞を攻め落としたらな」
 それでというのだ。
「もうな」
「街は攻め落とせる」
「そうなるからな」
 だからだというのだ。
「ここは敵も必死や」
「そうか、じゃなあ」
「どないする」
「ああ、前線の兵達を下がらせてな」
 そしてとだ、久志は美奈代に話した。
「それでな」
「砲撃再開やな」
「術の広範囲攻撃もな」
「もう要塞全体に仕掛けるか」
「ああ、そしてな」
 そのうえでというのだ。
「ここを更地にしてでも」
「攻略するか」
「もうこうなったら徹底的だ」
 敵があくまで抗戦してくるならというのだ。
「それこそな」
「それでやな」
「ああ、やってやるな」
「思い切った決断やな」
「苦戦するよりもいいだろ、それで死んだ奴は敵も味方もな」
 戦場には魂が多く漂っている、戦死した者達のそれである。その魂に復活の術をかけると身体が何処にあろうとそして消えていようと復活させられるのだ。
「戦の後でな」
「復活させるな」
「ああ、だからな」
「今はやな」
「敵兵が砲撃で大勢吹き飛ばされても瓦礫の山に埋もれてもな」
 そうなって亡骸が酷いものになってもというのだ。
「ここはな」
「もう後で復活させるから」
「いいだろ、酷い死に方してもな」
「そんなん言うてる場合やないな」
「やっぱり戦でもな」
 どうかとだ、久志は語った。
「出来るだけな」
「敵の亡骸は奇麗な方がええな」
「ああ、倒すにしてもな」
「そう考えるな」
「別に恨みとかない相手で」
 久志はさらに話した。
「それにな」
「悪事も働いてへんしな」
「これが略奪暴行ばかりしてる連中なら別だよ」
 そうした軍隊ならというのだ。
「その時はな」
「もう徹底的にやな」
「殺してやってな」
「そのうえで魂もな」
「消し去ってやるけれどな」
「普通の相手やとな」
「倒すにしても出来るだけ奇麗な身体で殺して」
 そして苦しませずにだ、久志も他の者達も普通の者達に対しては決して残虐ではない。
「それでな」
「復活させるな」
「ああ、しかし今はな」
「そうも言ってられんな」
「やっぱり勝たないとな」
 久志は苦い顔で述べた。
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