後編
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涙ぐみながらうつむいた。
「ありがとう。でも残念ながら、君たちはこの出来事を記憶に留めておくことはできないよ。僕自身、今は仮そめの存在で、まもなく消えてしまうだろう。でも生きている君たちは、なんとか未来を勝ち取って欲しい。それを心から願っているよ。」
「任せてください。俺たちは負けません。」
真田が力強く答える。
それを聞いた幾月は、嬉しそうに微笑んだ。
「さあ。もう行った方がいい。この場所は、そろそろ消滅するはずだ。」
周囲が歪み、宮殿が徐々に崩れ始めていた。
オイジュスが固定していた世界が、再び崩壊しようとしていた。
「時間が無い。行くぞ。」
モルガナが声をかける。
「では、行きます。」
『彼』はそういうと、立ち上がった。
みんなで幾月に頭を下げ、そしてホールの外へと向かう。
去っていく姿を見送った後、幾月の姿は静かに消えていった。
宮殿が崩れ去る。
モルガナの導きで、まわり道をせず真っすぐに外へ抜けたため、かろうじて脱出に成功した。
しかし崩壊は宮殿のみにとどまらず島全体に広がり始めていた。
モルガナの後に続いてさらに海岸まで走ると、タルタロスから上ってきたと思われる階段が再び出現していた。
「ここでお別れだ。吾輩はメントスに戻る。幾月の言葉が本当なら、お前たちの事を覚えておくこともできないだろう。」
モルガナは振り向くと、みんなに向かって言った。
「それはたぶん本当だと思う。僕は以前にもオイジェスと戦ったはずなのに、そのことがほとんど思い出せない。」
『彼』がそう返した。
「残念だな。本当に世話になった。ありがとう。お前はいい仲間だった。」美鶴がモルガナに声をかけた。
「まったく見上げた根性だ。猫にしておくのがもったいない。」真田もそう言った。
「だから猫じゃねーって。」
モルガナがそう返し、そしてみんなで笑った。
「いつか吾輩もお前らみたいな仲間を見つけるよ。一人でできることには限界があることがよくわかったからな。」
「ああ、頑張れ。」真田が応えた。
「いつか人間に戻れるといいね。」ゆかり が涙ぐんで言う。
「ありがとう。じゃあな。お前らも頑張れよ。」モルガナが手を上げる。
「じゃあ。」
真田はそう言って手を上げてあいさつすると、先頭をきって階段を降りていった。みんなその後に続く。
そしてタルタロスの元のフロアに帰ってきた。
【みなさん聞こえますか?】すかさず通信が入った。
「風花?」
【ああ、良かった。今ちょっとの間、皆さんを見失ってしまっていて、通信もつながらないし、何かあったんじゃないかと・・・】
「大丈夫だ。全員無事にそろっている。ただちょっとおかしなことに・・・」
美鶴は言いかけて眉をひそめた。階段を上って以降のことが思い出せない。しかし激しい戦闘の後のように極
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