後編
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いっせいに振り向くと、扉を失った空間から何か巨大なものが膨れ上がるように出てきつつあった。
「あれは・・・」
その姿を見て『彼』が眉をひそめて考える。
「・・・オイジュス?」
「知っているの?」ゆかり が訊いた。
「いや、でも・・・頭に浮かんだんだ・・・たぶんどこかで出会ってる。」
『彼』の表情が険しくなった。
【思い出したか・・・我はオイジュス。苦悩の神である。】
ふいに頭の中に重々しい声が響き渡った。
ただならぬ重圧感に ゆかり の表情がひきつる。
「・・よく思い出せない。でも・・戦った記憶がある。誰かと一緒に・・・そして倒したはず。」
『彼』が記憶をさぐりつつ声を洩らした。
【神は簡単に滅びはしない。】
ドアから抜け出た巨大な姿。大きさの異なる無数の青黒い球の塊。体から更に次々と新たな球が膨れて巨大化し、3メートルほどの高さで止まった。その球の一つ一つに目のようなものが一つずつ赤く光っている。
うごめきながら前に進んでくると、そのままそこにうずくまった幾月をじわじわと飲み込んでいく。
「何が目的だ。」『彼』が叫んだ。
【お前たちの排除だ。人間は滅びを望んでいる。その望みをかなえるため、まもなく大いなる神が降臨する。神の降臨とともに人間は安らかな終焉を迎えるであろう。そして人間は生きる苦悩から解放されるのだ。我はそれを速やかに進めるため、この男の意思に介入した。】
「つまり幾月を操っていたってことか?」
美鶴が驚いたように言った。
【もともとはこの男の中にあった願望である。理性を抑え、その欲望を歪め膨らませてやった。この男は歪んだ欲望に駆られて全てのアルカナのシャドウを集め、人類の終焉に向けた下準備を行った。最後にはお前たちも排除する予定であったが、あいにく先にこの男の方が死んでしまった。そこで、この男の歪んだ心が消え去る前にその歪みをここに固定し、お前たちを誘い込むことにした。人類の終焉を邪魔するお前たちを排除するために。】
「死んだ人間の心まで利用するのか。」真田が怒りをこめて叫ぶ。
【全ては人間を苦悩から解き放つため。これは救いである。それが理解できない愚か者は、全て排除する。大いなる夜の神 ニュクスの為に。】
オイジュスから強烈な圧が押し寄せてくる。全員が足を踏ん張り、顔を歪めてそれに耐える。
「吾輩は・・・吾輩もその為に利用されたのか・・・」
ゆかり に支えられて起き上がりながら、モルガナがうめくように言った。
【お前の役割は、こやつらをこの場所への連れてくる為の道案内。既に役割は終えた。消え去れ。】
「そんな・・・吾輩は・・・吾輩はいったい何者なんだ。」モルガナが悲痛な叫び声を上げた。
【その答えはない。お前の存在に意味などない。】
「嘘だ・・・。」
呻くようにそう言うと、モルガナはそ
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