第25話
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5月になっていた可能性がある。危機に陥っている欧州方面軍に、間一髪で起死回生の新兵器を配備できた、かもしれないのだ。
先に記したように、早期配備は早期に研究、対策されることを意味するため、つまずく可能性を考慮に入れる分だけ反攻計画の見直しは必須となる。それでも欧州が完全平定された状態からの上陸・奪還作戦をするよりはマシだ、という考え方もある。誰も好んで敵前上陸などしたくはない。そんな危険を冒すよりは、ある程度手の内を知られることになろうとも欧州に陣地が残った状態、最低でも至近のブリテン島と対岸の上陸候補地一帯は確保していたい。5月中にモビルスーツを投入できていれば決して不可能な話ではなかったが、現実には最短で7月。二ヶ月も海岸で耐えろというのは不可能だ。というより、そんな状況に追い込まれてしまえばどれほど精強な軍でも一日で、いや一瞬で崩壊する。
地獄のDデイ再び、という気配に、いくらタカ派のレビルとはいえ弱気が少し顔をのぞかせるくらいには気落ちしているし愚痴も出る。
つい先日までサイド7の研究所にいた上に実戦士官ではないテムには、戦略もレビルの抱える焦燥も分からない。それでも常識でわかることはある。一般論とわかっていながら声をかけた。
「レビル将軍、欧州本土を一時的に制圧されようとも、水上戦力で優位なわが軍ならブリテン島を抑えていればそこからの欧州開放も十分可能と思われますが。私には政治のことは分かりませんが……」
テムの不器用な慰めをレビルの声が叩き切った。
「これは純粋に軍事的な問題なのだよ。連邦議員や軍の派閥など、何ら問題ではないのだ」
「……はい」
「ユーロトンネルはモビルスーツでは通過できん。高さが足りんし、ブリテン島の出口は我々が抑えたままだからな。運よくコロニー落としにも残ったものの、トンネル内部で戦闘になれば今度こそ崩落の可能性もある。故に、たとえカレーを奪われようともトンネルの通過、陸路での通過は不可能だ。だが……英仏海峡は狭いからな。長くても180km、最狭部のドーバーなら34kmしかない。だからこそ欧州方面軍の支援に向く要地だったのだが……映像から判断してジオンの新型は時速200kmを超す。この新型なら、簡単な改修や補助装備があれば海峡を直接渡ってくるだろう、というのが参謀本部の結論だ。映像のそのままに渡ってくる可能性も指摘されている」
「洋上での迎撃は……」
「十分な水上艦艇がないのだよ……これは極秘だが」
レビルが口を滑らせた内容にはテムも驚くしかなかった。コロニー落としの被害は宇宙にいたテムも承知している。しかし同時に、北大西洋は津波の被害が比較的小さいことも理解していた。地球連邦軍にとっても、大西洋に残された水上艦艇群は最大戦力だったはずである。それがもはや存在しないとは。ジオンに
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