第25話
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砂塵を上げて滑走する鉄の巨人。巨大な筒を担いだ鈍重そうな見た目にもかかわらず、右に左に軽快に巨体を振り、放たれる砲弾を躱していく。巨人の単眼が上を向くと、その背面から空に向かって光と煙が吹き上がる。デコイだ。巨人を狙ったミサイルのほとんどはが打ち上げられたデコイに釣られて空に消えたが、残ったミサイルでも仕留めるには十分。巨人は逃げの一手か巨体を傾けて右方向に一直線に振り切るつもりかと思いきや変針して真正面、追尾ミサイル群に向かって再加速、からの左に横っ飛び。コの字を描く動きで見事すべてのミサイルを躱し切った。
ミサイルは横一直線の動きを追うことで軌道を揃えられ、急接近で角度を付けさせられ、反対方向への急加速で目標を見失ってしまったのだ。顔のすぐ前と腕を伸ばした状態で手を振って比べてみればわかるだろう。遠ければ追えるものも近ければ追えなくなるのだ。さらに、ミサイルは徐々に加速していく。加速し続けたままの急な変針に曲がり切れなかったのだ。
追尾ミサイル群をやり過ごして荒野を滑走していた巨人はそのままの勢いで市街地に突入し、そこで世界は形が乱れて止まり、一気に暗く、何も見えなくなった。映像が終わったのだ。
プロジェクターが止められ徐々に室内の明るさも戻ってきたが、この映像を見せられた人間は声もなく固まっていた。平気なのは見せた人間だけ。髪も髭も白く一見したところ老人だが、それでも眼光鋭く体格もよく、本来なら退役間近でであったことなど微塵も感じさせない堂々たる風格。地球連邦軍大将、ヨハン・イブラヒム・レビルである。小さめの会議室にレビルの声だけが流れる。
「……ここから先の映像はない。画面には映っていなかったが他に二機、同型のモビルスーツが別方向から同時に市街地に侵入、攪乱して離脱していった」
「……」
「レイ大尉、これがつい先日確認されたジオンの新型だ。従来のザクとは全く違う新型……これに対するにV作戦を見直すべきではないかという声も……」
「必要ありません!」
突然の大声。大将の話を大尉が遮る。そんな無礼を全く気にせず、沈黙を破ったテム・レイ大尉は捲し立てる。
「確かにRGM系列の仮想敵はザクを想定していますが、この新型機にも十分対応は可能です。そもそもこの新型機には今見ただけでも指摘し得る問題、欠陥とも言うべき問題があり……」
言葉を紡ぎながら立ち上がるとプロジェクターを操作し、新型機の全身像が捉えられる画面で止める。
「映像の中では使用されていませんが、この右肩に担いだ武装、これは後部の形状からロケットではなく無反動砲、ザクのものよりもかなり大きな無反動砲です。一方で、逆の手に握られた機関砲ですが、これもザクのものとは形状が異なります。おそらくこちらは口径が小さいでしょう。理由はホバー推進の欠点にありま
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