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俺様勇者と武闘家日記
第1部
カザーブ〜ノアニール
師の願い
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たとき、たまに見せてもらったことあるもの。たしかここに傷が……あっ、あった」
 爪を手に取り、傷があった場所を確かめると、それは紛れもなく師匠のものだとわかった。でもなんでこんなところに埋めてあったんだろう?
 私が鉄の爪を不思議そうに眺めていると、ユウリが私の手からそれを取り上げる。
「要するに、お前に使ってほしいからここに埋めたんだろ」
「え?」
「本当は生きてるうちに渡したかったが、そのときはまだお前は半人前以下だった。だから、お前が一人前になってまたここを訪れたときに渡せるよう、ずっとここで留まってたんじゃないのか」
「……じゃあ、師匠は幽霊になってもずっと、ここで私が来るのを待ってたってこと?」
「そういうことなんじゃないのか」
 ユウリは鉄の爪をひとしきり確認したあと、私に再び渡した。
 だけど、師匠が亡くなったあともしょっちゅうここに来てたのに、一度もこんな風に現れなかった。そのときはまだ師匠が私を一人前だと認めてなかったってことなんだろうか。
「けど、今ので成仏はしたみたいだな」
「本当?」
「ああ。ここに来るとき何人かの気配はしてたが、今は一人減ってる気がする」
「へー、そうなん……」
 え、ちょっと待って。幽霊って気配とかでわかるの? しかも今何人かいるって言ってなかった?
「あ、あのさユウリ。まさかここに師匠以外の幽霊がいるってこと?」
「見えるわけじゃないが、何人かいるのは間違いないな」
 そういって、明後日の方向に視線を移すユウリ。その様子を見たとたん、私の顔は青ざめた。
「ユウリ! もう夜も遅いし、早くうちに帰ろう!!」
 私はユウリの返事も待たず、あわてて彼の手を引っ張ると、一目散にこの場から逃げ出した。



「で、お前の師匠が残したものってのが、それ?」
寝ぼけ眼で私が手にしている鉄の爪を指差したのは、結局朝まで爆睡していたナギ。同じくシーラも今しがた起きてきたばかりで、ぼんやりとこの鉄の爪を眺めている。
 あれからすぐに家に帰った私とユウリは、お母さんに事情を話したあと、ユウリの分の布団を用意してもらった。お父さんが商人だからなのか、急な来客に対応できるよう何組か布団は用意してあるらしい。このけして広くない家に、どれだけの布団がしまいこんであるのだろうか。
 ともあれ、無事にユウリを休ませることができ、私もつかの間の実家での一夜を過ごすことができた。
 ただ寝付いたのが明け方近くだったので、ほとんど睡眠が取れていない。けれど私が起きて居間に行くと、すでにユウリは起きていて、いつもと変わらない様子で居間のテーブルに座り、お母さん特製のベーコンエッグを口にいれていた。
 ほどなくナギとシーラがやってきて、キッチンにいたお母さんとエマは、先に私たち四人分の朝食を用意し
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