第1部
カザーブ〜ノアニール
師の願い
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「どっ、どうして師匠がこんなところにいるの!?」
私は夜中にも関わらず叫んでしまった。隣にいたユウリが手で制す。
「にわかには信じがたいが……。あれは幽霊だな」
「幽霊!?」
その言葉に私は思わず身震いした。私は幽霊とかの類いが死ぬほど嫌いなのだ。
「ここが墓場で、謎の発光とともに死んだは
ずの人間が現れたってことは、まず幽霊で間違いないだろ」
まあ、幽霊ってのはわかるんだけど、なんで今現れたんだろう? それに私は生まれてから一度も幽霊なんかみたことないし、急に不思議な力が備わったにしても唐突すぎる。
「もしかして、ユウリが何かしたの?」
「バカ、そんなわけあるか。ついさっきお前の話を聞いたばかりなのに、あの幽霊のことなんかわかるわけないだろ」
じゃあ一体、と幽霊姿の師匠をじっと見る。姿が師匠でなければ逃げ出していたが、それでも腰が引ける。私はおそるおそる師匠に近づいてみた。すると、
《ミオ……。お前の強い意志、確かに感じた……》
師匠の声が聞こえてきたではないか。幽霊って話せるの?!
《おれはお前を中途半端なままここに残してきたことが心残りだった……。だが、今のお前ならきっと大丈夫だろう……。おれが眠る場所を探してみるといい……》
そう言い終えると、光とともに師匠の姿は消え、辺りはもとの暗闇へと戻った。あっという間の出来事だった。
そして沈黙を破るかのように、ユウリが口を開く。
「眠る場所を探せって言ってたな」
「うん。多分そこのことだと思う」
私は幽霊が現れた場所にある、小さい石碑を指差した。手入れされた石碑には、師匠の名前が彫られている。
「とりあえず掘ってみるか」
「え?! 勝手にお墓荒らしちゃって、神父さんに怒られないかな」
「お前の師匠が言ってたんだから構わないだろ」
私の答えを待たず、ユウリは剣を鞘から抜くと、その鞘を使って石碑の下の土を掘り始めた。さすが勇者、行動力が早いなあ。
いや、感心してる場合じゃなかった。とりあえず怒られる前に後で謝ろう。私もユウリの向かいにしゃがみこみ、手で掘ることにした。
すると、鞘に何か硬いものが当たる音がした。掘り進めると、木箱のようなものが現れた。急いでその木箱を掘り起こしてみるが、なかなか出てこない。
それもそのはず、取り出してみると、私の指先から肘くらいの大きさがあったからだ。
木箱を開けると、さらに金属製の箱が入っていた。随分厳重だなと思いながら、蓋を開ける。
「……! これって……」
箱に入っていたのは、師匠が生前、かつて世界中を冒険していたときに使っていたと私に見せてくれた、『鉄の爪』だった。
「なんで、こんなものがここに……?」
「知ってるのか?」
「うん。師匠が昔、使ってたものだよ。私が修行して
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