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剣の丘に花は咲く 
第五章 トリスタニアの休日
第三話 女ったらしにご用心
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とは違う……そう、貴族だってすぐに分かった。
 ……それも落ちぶれた貴族じゃなくて、現役の貴族だって。

 ……最初は良かったのに。
 客のあしらい方が全く分からず、あたふたするあの子を見てた時は良かった。客を殴ったり酒を浴びせたり……。
 馬鹿だなって思ってた。
 いつも私達を馬鹿にする貴族が慌てたり、叱られて落ち込んでいる姿をみて心の隅で笑ってた。

 だけど……あの子は変わった……。
 あたし達が決して真似できない、貴族の立ち振る舞いで、客を魅了していった……。

 変わったのは、あの人が切っ掛けでしょうね……。

 ルイズの兄だと言っていたが、どう見ても兄妹には見えない男。
 異様に執事服が似合う男。
 執事服よりもフリフリのフリルのついたエプロン姿が似合う男。
 料理が上手な男。
 ……変な……男。
 
 あの人と出会ったのは、常連のしつこい男に絡まれた時だった。
 周りは誰も助けてくれず、どうしようかと思った時に彼は現れた。
 男から助けだしてくれた彼が、働く場所を探していたから、感謝や興味とか色々あったし、軽い気持ちで家の店で働くことを誘ったんだけど。

 興味は最初からあった。
 鋼のような肉体。
 鷹のような眼光
 そんなどう見ても一般人には見えない男が、貴族を連れて仕事を捜していると言えば、興味を持つなと言われても無理よね。
 で、蓋を開けてみるとやっぱり只者じゃなかった。

 屈強な傭兵達を簡単にあしらう程強いし。
 慣れた手つきで美味しい料理は作るし。
 店を見間違えたかと思うほど綺麗に掃除するし。
 いつの間にか女の子の相談に乗ってたりしてるし。
 
 仕事柄色々な男を見てきた。

 強い男。
 弱い男。
 天才。
 凡才。
 怖い男。
 優しい男。
 料理上手。
 掃除上手。
 
 本当に色々な男達を見てきた。
 物心ついた時からを含めたら、一体どれだけの男を見てきたのか自分でも分からない。
 だからあたしは男を知っていると思っていた。
 そりゃ、まだ男としたことはないから、男の全てを知っているとは言わないけど。
 男の性格や考えとかは知っていると思っていた。
 そう……思ってたんだけど……。
  
 ……あの人のことは分からなかった。
 全く同じ人なんかいやしないって分かっているけど、でも、似通うところはあるから、全く分からないなんてことは今までなかった。
 それなのに、あの人のことは分からない。

 近づくのも恐ろしい時もあれば、包み込まれるような優しさを見せる時があるし。
 戦うために鍛え抜かれた肉体で、感嘆の声しか出ない料理や掃除をしたり。
 女慣れしてないと思えば、こちらが照れてしまうほど恥ずかしいことをし
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