第五十七話 新大陸を目指して
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「はい、次の人〜」
「失礼します」
次に部屋に入ってきたのはアニエスだった。
未だにアニエスはマクシミリアンと目を合わせようとしなかった。
「よく来た。そこの椅子に座って楽にしていてくれ」
「……はい」
アニエスは言われたとおりに椅子に座り大人しくしている。
マクシミリアンは、さっきと同じように秘薬を持ち杖を振るった。
「イル・ウォータル……」
「……」
「所でアニエス」
「……」
「先日は、その……ごめん」
マクシミリアンは素直に謝った。
「いえ、正直な所、私も迂闊でした」
「よかった、嫌われたかと思ったよ」
「……ですが、以前の事は『なかったこと』となっています。殿下もみだりに口に出さないよう、お願いいたします」
「うん、分かった」
この会話中にも、アニエスの周りには光の粒が光っては弾けた。
「さて、終わった」
「ありがとうございました」
「ああ、アニエス」
アニエスが立ち上がろうとした所を呼び止めた。
「お互い、キツイ船旅だったが、上陸してからが本番だ」
「このアニエス・ド・ミラン。粉骨砕身、殿下のお力になる事をここに誓います」
椅子から立ち上がったアニエスは片膝を付き、頭をマクシミリアンに垂れた。
「うむ、期待している」
芝居がかったアニエスの姿にマクシミリアンは、主君が騎士の叙任にするように杖をアニエスの肩に触れた。
なんとなく、お互い余所余所しい雰囲気だったが、こういった芝居じみた事で仲直りできればめっけものだと、マクシミリアンは思った。
「後で発表しようと思っている事だが、新大陸探索に大いに奉献できれば、身分を問わず『シュヴァリエ』への叙任を考えている。この好機を上手く役立ててくれ」
「御意」
「うん、下がってよい」
アニエスは一礼し部屋を出て行った。
身分の違いを鑑みずにした結果、内乱を起こしてしまった事はマクシミリアンの苦い経験の一つだ。
しかし、王国に多大なる貢献を与えることが出来れば、平民であろうと重用しようと決めていた。
乗組員全員の検疫および予防接種は終了し、いよいよ上陸を前にマクシミリアンは薫陶を与えた。
一つ。
『未知の土地である事から、常に用心に用心を重ねる事』
一つ。
『我ら以外に味方は居ないと思い、味方同士の連携を重視し、抜け駆けは控える事』
一つ。
『原住民と接触した場合は、即座に司令部に連絡し、原住民に対する粗暴な振る舞いを控えて、一人一人が王国の代表である事を自覚する事』
最後に
『以上、三つの薫陶を胸にし、探索に大いに貢献した者を、
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