第五十七話 新大陸を目指して
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ン様が入浴中にも関わらずに、風呂場に乱入した殿下に非がございます。この一件はお互いの為に『なかったこと』にいたしましょう……如何ですかな?」
有無を言わせない迫力に、アニエスは自動的に首を縦に振った。
「はい、そうですね……」
「大変、嬉しく思います。では失礼いたします」
言質を取ったセバスチャンは、最後にニッコリと笑うとマクシミリアンを抱えて風呂場を出て行った。
(た、助かった……)
セバスチャン達が脱衣所を出て行くのを確認すると、湯船から上がり床に両膝をついてへたり込んだ。
☆ ☆ ☆
数日が経ち、マクシミリアンとアニエスとの間には微妙な空気が流れていたが、ベルギカ号は興奮の坩堝と化していた。
「陸だあぁぁーーー!」
「本当に陸があった! 新大陸だ!」
ベルギカ号の進行上には、緑色の陸地が見えていた。
その光景を指差しながら、水兵達はお互い抱き合いその喜びを分かち合っていた。
「新大陸発見おめでとう艦長」
「こちらこそ、おめでとうございます殿下」
艦橋ではマクシミリアンとド・ローテルが握手をしていた。
「上陸の準備をさせますが宜しいでしょうか?」
「あ、上陸前に検疫を済ませたいので、ちょっと待って欲しい」
「御意」
「手が空いた乗組員を随時、僕の部屋に尋ねさせる様に手配をお願いします。艦長を含め全員を、ね」
「畏まりました」
ド・ローテルは恭しく一礼した。
急遽、マクシミリアンの部屋で執り行われる事になった検疫に、乗員達は高ぶった心に腰を折られる形となったが、声に出すわけにはいかない。
手が空いた者がマクシミリアンの部屋の前に列を成し、何時終わるか分からない検疫にヤキモキしていた。
「あの〜、失礼いたします」
水兵が一人、マクシミリアンの部屋を尋ねた。
「よく着てくれた。検疫および予防接種は、十秒と掛からない。椅子に座って楽にしていてくれ」
マクシミリアンは、水兵に椅子に座るように促した。
「分かりました」
「イル・ウォータル……」
早速、水兵が椅子に座ると、マクシミリアンは秘薬の瓶の蓋を開け、スペルを唱え杖を振るった。
すると椅子に座った水兵の周りに、光の粒が煌めき舞った。
「うわあっ?」
「大丈夫だ、心配しないでくれ」
やがて光の粒は消えてなくなった。
「はい、終わり。下がっていいよ」
「もう終わりですか? あ、いえ、失礼しました」
夢でも見たような気持ちで水兵は去っていった。
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