第五十七話 新大陸を目指して
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日のアニエスの仕事は、遅番のシフトだった。
仕事と言っても、やる事は歩哨ぐらいで、退屈に感じながらも明け方には仕事が終わった。
エレオノールら同居人達は、当然ながら寝付いていてアニエスも寝てしまっても良かったが、寝る前に風呂に入りたかった。
(今日は、船酔いもそれ程酷くないし、ゆっくり寝られそうだ)
地獄の様な吐き気と苦しみから解放され、アニエスは上機嫌だった。
深夜という事もあって、風呂場には誰の姿も無くアニエスの貸し切り状態だった。
「……ふう」
湯船に肩まで浸かり一息ついたアニエス。
この瞬間が何よりの至福の瞬間だった。
アニエスは、両手で湯をすくって顔に浴びせると、そのまま湯船の中に潜った。これも貸切の特権だ。
この辺のところが、まだアニエスが14歳の少女たる所以だろう。
「……ぶくぶく」
風呂で遊んでいると、ドアが開いて何者かが入ってきた。
しかし、潜っていたアニエスは、これに気付かなかった。
ガチャリと、ドアを開けて入ってきたのはマクシミリアンだった!
全裸のマクシミリアンは、未だに『眠気まなこ』の状態だった。
「うぅーい」
マクシミリアンは、桶にお湯をすくって頭から被ると湯船に入った。その掛け声は、まるで何処かのおっさんだ。
(う、誰か入ってきた)
潜水していたアニエスは、誰かが湯船に入ってきた事にようやく気付いた。
(おかしいな、ちゃんと看板を掛けて置いた筈なのに)
看板とは、『女性入浴中』と書かれている看板で、この看板が掛けてある状態で、風呂場に侵入すると厳しい罰が課せられる……訳ではなく。拘束力の無い、ただの紳士協定だが……
……乗組員は紳士揃いなのか、今のところ罰を受けた者は居なかった。
チャプン……と、頭の上半分を湯船から出して隣を見ると、侵入者の正体はマクシミリアンである事に気付いた。
「ぶほっ!?」
アニエスは思わず噴き出してしまったが、頭の下半分は湯船に浸かっていたお陰で大きな音は出なかった。
「♪〜」
幸い、マクシミリアンは、歌を歌っていて気付いていない。
ちなみに曲名は、土曜夜八時に全員集合する番組のED曲だ。
アニエスは、気付かれないようにマクシミリアンから遠ざかった。
アニエスとマクシミリアンとの間には、大人一人分の微妙空間が出来た。
「むふー」
「……」
……どれくらい時間が経っただろう。
マクシミリアンの独唱会に、アニエスは辟易していい加減に風呂から上がりたかったが、そんな事をしたらマクシミリアンに裸を見られてしまう。
年頃のアニエスにとって耐えられない事だった。
ちなみに、マクシミリアンの歌は金が取れる
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