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鬼熊
第四章

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「だから拙者も一つ手を使った」
「それはどういう手ですか」
「それは一体」
「どういったものだったのですか」
「最初に燕返しを使ったが」
 彼の秘剣であるそれをというのだ。
「普通では切れぬ」
「化けものの両足を断ち切りましたが」
「それは出来ぬものでしたか」
「普通では」
「刀に気を入れた」
 そうしたというのだ。
「それで切った、拙者程になると剣の一閃に気を込めることが出来て」
「それで切ることが出来ますか」
「刃で切るだけでなく」
「気でも」
「刃に加えて気も使った」
 そうもしたというのだ。
「気を飛ばすことも出来たがな、剣の一閃で」
「しかしそれでもですか」
「それでは化けものは切れぬ」
「そう思われてですか」
「刀に気を入れてな」 
 そしてというのだ。
「切ったのじゃ」
「それで化けものの両足を断ち切ることが出来ましたか」
「その分厚い毛皮と硬い骨を」
「それが出来たのですか」
「そういうことじゃ、それでな」
 小次郎はさらに話した。
「両足を切り返す刀でな」
「喉元を切った」
「そうされましたか」
「止めとして使った、若し刀に気を入れねば」
 そうして燕返しを使わなければというのだ。
「勝てなかったわ」
「そうなっていましたか」
「この度の勝負は」
「お武家様が負けていましたか」
「そして死んでおった」
 小次郎は村人達に言い切った。
「拙者がな」
「それが勝負というものですか」
「一撃を防がれるかかわされた方が負ける」
「そして死にますか」
「それば剣を持つ者の勝負というものじゃ」
 小次郎は冷静な声で話した、そしてだった。
 村人達と共に化けものを退治したことを村に戻ってから村人達に告げた、この時化けものの骸は村まで村人達と共に運んできたが。
 小次郎はその骸を見て村人達に話した。
「化けものといえど熊は熊じゃ」
「といいますと」
「熊は食える」
 村人達にこのことを笑って話した。
「だからな」
「肉を食う」
「そうされるのですか」
「これより」
「皆で食わぬか」 
 化けものをというのだ。
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