第二章
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「延々と続く、たまらんと思って帰ろうとしてもな」
「そこにもじゃな」
「蚊帳があってな」
「まためくらねばならんのじゃな」
「そうしたものらしい、それで朝まで蚊帳をめくらねばならん」
「それは狸の仕業ぜよ」
龍馬もここまで聞いて述べた。
「そうとしか思えないぜよ」
「そうであるな」
「まっことのう」
「なら」
ここでようやく岡田が口を開いた。
「その狸を切れば」
「何処におるかわからんのにか」
武市は岡田にそれはどうかという顔で返した。
「するのか」
「ああ、姿は見えんか」
「狸は化かす時は姿は見せぬ」
そうするというのだ。
「そういうものじゃ」
「そういうものか」
「だからお主の剣術もな」
岡田の自慢のそれもというのだ、武市は彼に冷静に話した。
「意味がないぞ」
「そうなのか」
岡田は武市のその言葉を聞いて無念そうに述べた。
「ではわしではどうにも出来んか」
「お主にとっては残念だがな」
「仕方ないのう」
「まあこの場合剣は関係ないぜよ」
龍馬は武市と岡田に笑って話した。
「だから以蔵さんは別にぜよ」
「このことはか」
「じっとしていていいぜよ」
「そうか」
「わしが言っても刀は抜かんぜよ」
龍馬は剣術はかなりの腕だ、北辰一刀流免許皆伝であり岡田も認めかつ剣術でも土佐藩に知られている武市も一目置いている。
「絶対に」
「おまんは嘘は言わんからな」
「おう、刀はぜよ」
絶対にとだ、龍馬は武市に答えた。
「絶対に抜かんきに」
「そうするか」
「そしてじゃ」
それでとだ、龍馬はさらに話した。
「その須崎の蚊帳のこともじゃ」
「どうすればいいかか」
「突き止めちゃるわ」
「そうか、なら須崎に行くか」
「そうしてくるぜよ」
龍馬は武市に笑って答えた。
「今から」
「思い立ったらじゃな」
「おう、行って来るぜよ」
「わかった、なら行って来い」
武市は龍馬に明るく笑って返した、こうした時の龍馬は必ずやってくれると幼い時からの付き合いから知っているからだ。
「おまんはやってくれる」
「ほなのう」
「ああ、それでな」
「それで?」
「おまん一人でもいいが」
それでもとだ、武市は龍馬にこうも話した。
「狸もただ化かすだけじゃしのう」
「それでもじゃな」
「わしも行きたいが」
「その狸の化かしを見にじゃな」
「そう思って行ったが」
「武市さんも忙しいきにのう」
「何かとな」
城にも出入りして藩主の山内容堂や彼の片腕吉田東洋とも藩政について話しているのだ。下士であるが武市はそうした立場であるのだ。
それでだ、龍馬にも残念そうに述べた。
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