第二章
[8]前話
犬はすぐに回復し夫に事情を話した詩織が家に引き取った、犬は雄でまどかがジョンと名付けた。ジョンは最初家族を怯えていたが。
それでもだ、次第に家族に懐いていった。まどかは家ではよくジョンと一緒にいて詩織や父の克己が連れて行く彼の散歩には絶対についていった。
克己は大柄で太った四角い顔の中年男だ、職業はサラリーマンである。その彼がジョンを見つつこう言った。
「この子亀田さんのところのゴンじゃないか?」
「亀蛇さんってあの」
詩織はその名前を聞いてその瞬間に眉を顰めさせて言った。
「五丁目の評判の悪い」
「ああ、酒好きで暴れ者で下品でな」
克己はその彼のことを話した。
「職場でも評判が悪いっていう」
「そうよね」
「この前横領がばれて懲戒免職になったな」
「あの人よね」
「あの人家に犬を飼っていてな」
「そのゴンって子がなの」
「ジョンじゃないか?」
妻に家に庭で話した。
「ひょっとして」
「そうだったの」
「あの人家で随分と文句ばかり言って暴れていたって近所でも言われていたそうだし」
「ジョンにも酷いことしていたのね」
「ああ、だから口を縛ってな」
そうしてというのだ。
「捨てたのかもな」
「そうだったの」
「ああ、しかしもうあの人はな」
その亀蛇という男はというのだ。
「横領がばれてな」
「会社を首になって」
「刑事告訴されてしかも酒と風俗とギャンブルで闇金から二千万も借金があるそうだし」
それでというのだ。
「家も売るだろうし」
「もうこの街にはいなくなるのね」
「そうなるだろうしな、もう忘れていいさ」
「そうなのね」
「あんな人に飼われていたら可哀想だよ」
ジョンを見つつだ、克己は悲しい目で語った。
「本当に」
「そうよね」
「だからその分僕達が優しくしていこう」
「そうね、酷い目に遭った子は余計にね」
「そうしてあげよう、どんな子でも優しくすべきだけれど」
「辛い目に遭った子はね」
詩織も思うことだった。
「普通の子よりも」
「余計に優しくしないとな、ジョン今日のご飯はラムのドッグフードにハムだぞ」
「ワン」
ジョンは克己の言葉に笑顔で応えた、そうしてご飯を尻尾を横に振りつつ食べた。その時まどかも彼女の両親もずっと彼の周りにいて笑顔でいた。その彼を見ながら。
閉じられた口も 完
2020・3・27
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