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Sword Art Online -Gun Sword-
Sword Art Online
prologue
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するなら、そういう意味ではギアの生み出す世界は使用者にとって現実そのものとなるわけだ。現実の「現実らしさ」、リアリティはまた別の問題であるが。
 仮想世界内において、使用者はさまざなアクションを起こす。そのとき脳から発せられる運動信号のうち、体を能動的に動かすものだけを延髄部のパッドがインタラプトしてギア内部に取り込み、本体にフィードバックする。このようにしてプレイヤーは椅子の上で体を動かすことなく、仮想の世界で動き回ることが可能となる。
 無論、現実の世界からの刺激はすべてギアがシャットアウトしてしまうため、専任のインストラクターがいない家庭での使用には危険がともなうと予想された。使用者は現実世界においては失神状態にあるのと同様であり、仮に肉体に火災等の危機が迫った場合でも使用者がそれに気づくすべがないからだ。そこでギアには、温度の変化や音、振動など一定量以上の外界刺激が与えられたり、または心拍、体温等の肉体的な異常を検出した場合(付け加えれば生理的排出現象をうながす信号が下半身から発せられた場合を含む)には自動的に接続を切り意識を回帰させるセーフティ機構が与えられた。
 使用者が現実世界で最後に行う動作は、「リンク・スタート」と発声することだ。音ではなく、その発声のために脳が下した命令信号を感知してギアは動き出す。
 シールドの下で閉じられているはずの眼の前にスペクトル状の光が弾け、やがて白に統一されたその中に荘厳な効果音とともにメーカーのロゴが浮かび上がる。ついで基本ソフトのロゴが表示され、その下で各種接続テストがリストアップされては右側に次々とOKの文字を残して消えてゆく。
 それらが終了すると、LOADINGの表示と共にセットされたアプリケーションが読み込まれてゆき、最後にひときわ輝くSTARTの文字。同時に開始画面は中央から放射される白光の中に飲み込まれてゆき、その向こうから徐々に姿を現す仮想の――いや、もうひとつの現実の世界。ゲームフィールドに降り立ったプレイヤーは、もはや椅子の上に横たわる己の肉体を感じることはない。
 本体に同梱されていたゲームソフトは単純な飛行レースゲームだったが、俺はその世界にいつまでも飽くことなく潜りつづけた。とうとう家族に強引に揺り起こされたとき、窓の外がすっかり暗くなっていたのには驚いたものだ。

 民生用機器の発売と同時に、無数のアミューズメントタイトルが発表された。ナーヴギアの基本ソフトは非常に汎用性のあるもので、極論すればそれまで存在した3Dゲームですらちょっと手を加えるだけでギア上で動かすことができた。もっとも、ギア最大の売りであるリアリティを最大限に生かすためには従来より遥かに作りこまれたモデリングが必要だったため、プレイヤーの多くはナーヴギアネイティブに開発された家庭用ならではのソフトを
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