第8章:拓かれる可能性
第237話「剥奪」
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「これも、所詮は“モノ”だ」
〈マスター!マス―――〉
悪神の手がエアに触れる。
その瞬間、帝の握る手から、エアの存在が消えた。
「ふん。素のお前など、無力な人間にすぎん。こうして力を奪えば、何も出来ないのだからな」
「っ……!」
投げられる。散らばる武器群の中へ体が叩きつけられる。
「こ、の……!」
その武器を手に取り、“それでも”と帝は立ち上がる。
「思い上がるな、人間」
「ッ……!」
だが、その武器の所有者は今や目の前の悪神だ。
振るう前に、手の中から消え去る。
「俺の“剥奪の性質”に奪われるモノなぞ、お前の力ではない」
「て、めぇえええええええええええええ!!」
我武者羅に殴り掛かる。
だが、拳が届く前に障壁によって阻まれる。
「返せ……!あの二人の力はこの際いい……!あれは借り物だ……!だけど!エアは、エアは借り物じゃない!あいつは……あいつは、ずっと俺を見捨てずにいてくれた、相棒なんだ!!」
「だからなんだ?こうして“剥奪”した以上、お前のモノではない」
「ッッ……!」
手が斬られる。
間髪入れずにいくつもの剣に串刺しにされ、後方に吹き飛んだ。
「ぐ……くっ……!」
「お前の相棒は、既に俺のモノだ」
「エア……!」
悪神の手にエアが握られる。
抵抗している様子はなく、むしろ粛々と従っている様子だった。
「せめてもの慈悲だ。お前の元相棒で死ぬがいい!」
「っ、ぁ……!」
エアによって、帝の体が貫かれる。
「切り裂け!エア!」
―――“Beginning of the Earth”
「がぁあああああああああああああああああああああああああああああ!?」
さらに、ダメ押しとばかりに世界を裂く一撃が炸裂する。
帝の体は千切れ飛び、無残な姿で横たわった。
「……エ、ア……」
手を伸ばす事も、もう出来ない。
優奈による“格”の昇華は残っているが、それでは“死なないだけ”だ。
体を再生する事も、もうままならない。
「(優奈……)」
足掻こうとも、足掻けない。
譲れないモノのために、立ち上がる事すら出来ない。
……それが、帝にとって絶望となった。
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