暁 〜小説投稿サイト〜
魔法少女リリカルなのは〜無限の可能性〜
第8章:拓かれる可能性
第237話「剥奪」
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 だが、その考えは一瞬で消え去った。
 背後からの衝撃と目の前で起きた出来事に、帝は呆気に取られるしかなかった。

「所詮は借り物の力と言う事か」

「帝!」

「おっと、邪魔はさせんぞ?」

「ッ……!」

 優奈がフォローしようとするが、“残酷な性質”の悪神に阻まれる。
 さらに他の悪神と洗脳された神々も優奈を包囲する。
 優奈や帝が行った分断を、今度は相手からしてきた。

「こうも容易く“奪える”とはな」

「お、前……何をした……!?」

 帝の前に降り立った神が帝を嘲るように笑う。
 その様子に、帝は怒りに震えながらもその先に踏み込めずにいた。

「文字通り、“奪った”のさ。お前の力を」

「っ、くそが!!」

 そう。帝は先程の一瞬でエミヤの力を全て奪われていた。
 そして、今度は帝がその投影による攻撃を受ける。
 咄嗟に王の財宝で相殺するが……

「それも所詮は借り物だ」

「な、ぁ……!?」

 肉薄され、手刀が帝の体を貫く。
 そして、ギルガメッシュの力すら、奪われてしまった。

「っづ、このっ……!!」

 砲撃魔法を至近距離から放ち、何とか間合いを取る。
 だが、この一瞬で一気に不利になってしまった。

「エア!」

〈っ……奪われました……!何の抵抗も出来ずに……!〉

「くそ……!」

 目の前に広がるのは、先程まで帝が放っていた弾幕。
 違うのは、それを繰り出しているのが目の前の悪神だと言う事だ。

「(奪う……そういった“性質”か……借り物の力でしかない特典だから、あんなあっさりと奪われたのか……!)」

 障壁で防ぎ、破られる前に砲撃魔法の魔法陣をいくつか用意する。
 破られると同時に砲撃魔法を放ち、転移魔法でその場から離脱する。

「(俺だって、ただぶっ放しているだけだと思うなよ……!)」

 エミヤやギルガメッシュの力が無くなったとはいえ、無力になった訳ではない。
 膨大な魔力とエアは健在だ。
 そして、その魔力を十全に扱う技術も既に培っている。
 手軽且つ強力な攻撃を連発出来なくなっただけで、まだやりようはある。

「(……けど……)」

 しかし、懸念は残る。

「(……この魔力も、それこそエアも……)」

 そう。その膨大な魔力とデバイスのエア。
 それらも帝の特典だ。授けられた力でしかない。
 つまり、奪われる可能性が高いと言う事だ。

「っ……だからって、諦められるかよ……!!」

 魔力弾を大量に展開し、帝は歯を食いしばって悪神を睨む。
 帝にとって、もう“勝ち目の有無”は関係ない。
 “譲れないモノ”(優奈)のために、立ち上がり続ける。


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