暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第24話:歌をあなたに、演奏を君に
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 一方部屋を出たクリスは真っすぐ透の部屋へと向かったが、そこに透は居なかった。
 ここに居ないとなると、彼の行く場所は限られる。きっと今日も、湖の畔に発声練習をしに行っているのだろう。

 今日で、それを終わらせる。

「すぅ……はぁ……」

 一度深呼吸し、覚悟を決める。
 そして声を出そうとして咽ている透の隣に無言で立つと、イチイバルを纏う時以外は遠ざけ、封印していた歌を紡いだ。

「ッ!?!?」

 再びクリスの口から奏られた歌を耳にし、透は目玉が飛び出さんばかりに見開いた。弾かれるように自身の隣に立つクリスの方を見る彼の目には、溢れんばかりに涙が浮かんでいる。

 歌いながら彼を見て、改めて自分の罪を認識しクリスの心が悲鳴を上げる。
 それを表に出さないようにし、クリスは歌い続ける。これが透への罪滅ぼしだと信じているから。

 最初、クリスが再び戦いに関係なく歌を歌い出してくれた事に歓喜していた透だが、彼はすぐにクリスが心の中で苦しんでいる事に気付いた。

 それで彼も気付いた。クリスは無理をして、自分の為に歌っているのだという事に。

 透は慌ててクリスの肩を掴み、首を左右に振った。

 そんな無理をしてまで歌う事は無い。自分を苦しめてまで、歌うようなことを透は望んでいなかった。

 しかし――――――

「いいんだ、透。あたしは、透の為に歌う。歌えなくなった透の代わりに、あたしが歌うよ。だからもう、透は苦しまないでくれ」

 クリスはそう告げると、取り付かれたように歌い出した。クリスにとっては今や苦痛でしかない歌を、透を癒す為に歌おうと言うのだ。

 そうではない、そうではないと透は声を大にして言いたかった。
 彼が聞きたいクリスの歌は、苦痛を押し殺した罪滅ぼしの歌ではなく、クリス自身が望んで歌う彼女が楽しめる歌なのである。

 こんな歌は断じて彼の望む歌ではない。

 だが今のクリスにただの言葉が通じぬことも理解できた。今のクリスは、透への罪滅ぼしをすると言う強迫観念にも似た想いで歌っている。

 どうすればいいか? 悩む透だったが、その瞬間彼の脳裏に父の顔が浮かんだ。
 そこで閃いた。今の自分に出来る事が、一つだけあったのだ。

〈コネクト、ナーウ〉

 透は閃きを実行に移すべく、コネクトの魔法で愛用の双剣――ヴァイオリンとしての機能を持つカリヴァイオリンを取り出した。

 そして彼はクリスの歌に合わせて演奏を始めた。出来る限り優しく、聞く者の心を癒すような旋律を。

 これはクリスの為の演奏だ。クリスが自分の為に、自分を癒す為に歌ってくれるのなら、自分は彼女を少しでも癒す為に演奏しよう。
 透はそう心に誓った。

 果たして、クリスの表
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