第三話
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あら、そういえば勇者様のお着換え、ありませんでしたね。ちょっとお待ちください、持ってきますから」
あー、ハイハイ……って、ちょっと待って!
私、この状況で待たされるの!?
暗くて寒い宿屋の裏庭で、一人しゃがみ込む私。
これも勇者に降りかかる数々の試練の一つ……なわけはありません。
風が吹き抜けるたび、スースーします。
きっと唇は紫色です。
寒空の下、歯の根も合わぬほど震えて待っていると、マリアさんがようやく帰ってきました。
「お待たせしました勇者様。私の服ですが、これを着てください」
考えてみれば私の分の着替え、持ってきてないなぁ。
マリアさんの服を着てみると案の定というかウエストが余りまくりです。
「あらー、お胸周りが余っちゃってますねー」
胸はいいんです!
仕方がないので紐で縛ったり結び目を作ったりしてなんとか調整します。
それにしても丈の長いスカートだなぁ。足に絡まって歩きにくい……。それに地面に擦りそうです。
「明日勇者様向きの服を買いに行きましょうね」
そうですね。
可愛いの、あるといいなぁ。
翌朝
「なぁ勇者様?」
なんでしょう?
「その格好はなんだ?」
昨日マリアさんから借りた服を着ている私をみて、ゴルガスさんは呆れ顔です。
「昨日晩服を洗濯しちゃって、まだちゃんと乾いてないんです」
「今日出発だって話だったよな?」
「仕方ないでしょ!着替えがないんだから!」
「そうですよ、女の子の支度は時間がかかるものなんですから」
と、マリアさん。
「ねー」
「ねー」
「わかったよ……で、これからどうするんだ?」
「着替えを買いに行きます」
「マジかよ……」
マリアさんに案内されてたどり着いたのは……市場でした。
あれ、服を買いに来たんじゃ。
マリアさんは露店の中で反物を扱っている店を見つけると、並べられた布を手に取って調べ始めます。
「勇者様はどの色がお好きですかー?」
え、もしかして布から仕立てるんですか?
「マリアさん、わざわざそんなに手間をかけてくれなくても、お店で売っているもので十分ですよ」
「でも仕立て屋さんに頼むと時間もお金もかかりますよ?大丈夫です、私5人の子供たちの服を全部手作りしてきたんですから!」
「でも……」
そこへ魔王が割り込んできました。
「おい勇者よ。任せときゃいいんだよ。ここにはお前が思っているような形で服を売っている店はないんだから」
「え、そうなの……なんで?」
「店頭に服を並べて売るようなスタイルの衣料品店は、
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