後編
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るかもしれない。」
「うわっ。いきなりスイッチが入りますね。完全にいつもの先輩だ。昨夜のへこんでた先輩はなんだったんですか。」
「君の為にも絶対に負けられないからな。私が弱っているときに力をくれるのはいつも君だ。」
迷いのない言葉だった。言葉に力が満ちていた。
「自覚はないんですけど・・・役に立ってるなら何よりです。そうですね、私も切り替えて戦いに備えないと。」
ゆかり は、ふとニュクス戦を前にして感じていた重苦しい気分が抜けていることに気がついた。昨日までは「世界が終わるまであとわずか」という思いに捉われていたのに、今は戦いの先を考える心のゆとりができていた。
未来に思いをはせ、心が定まる。もう迷いは無い。今なら空の星でも射貫けそうだ。
「そうだ。先輩、大学もう決まってるんですよね。ニュクス倒して私の期末試験が終わったら、二人でどこかへ旅行にでも行きませんか。」
「エクセレント! 名案だ。ヨーロッパか、オーストラリアにでも行くか。」
ゆかり の言葉に、美鶴が顔を輝かせる。その反応に ゆかり も思わず笑ってつっこんだ。
「いや・・・その辺の温泉かなんかでいいですって。そこで二人でゆっくり話をしましょう。」
「ああ、そうだな。・・・八十稲葉にいい温泉宿を知っている。終わったら二人で行ってみよう。」
「いいですね。楽しみです。」
「よし、さっそく予約を入れておこう。」
二人で顔を見合わせて笑う。いつもの心地よい雰囲気の戻っていた。いや、まぎれもなくいつも以上の一体感があった。
いつまでもこの時間が続けばいいと思った。
しかし、美鶴はこの後の予定を立てている。自分は自分で、できることに取り組まなくてはならないだろう。
「さて、じゃあ私はとりあえず一度部屋に戻りますね。」
ゆかり はそう言うと、立ち上がってドアの方に向かった。
ドアノブに手を伸ばしたところで、「あ・・・ゆかり・・・」と美鶴が声をかけてきた。
「はい?」
振り向くと、すぐ後ろに、恥ずかしそうに顔を赤らめた美鶴が立っていた。
「その・・・良かったら、もう一回・・・キスだけ・・・。」
ゆかり の胸がキュンとなった。
「・・・で、あっさり落ちたと。」
『彼女』が呆れたように言った。
「しょうがないじゃない。なんだかそうなっちゃったんだもん。」
シャガールで紅茶を飲みながら、ゆかり は赤くなった。
「ともかく、この戦いは負けられないのよ。先輩の為にも・・・。」
「そうだね〜。また負けられない理由が一つ増えちゃったね。」
『彼女』の言葉にうなずくと、ゆかり は窓の外に目を向けた。もうすぐ日が暮れる。
いよいよ決戦の日が訪れる。
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