後編
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美鶴は落ち着いた様子で、テーブルに紅茶を並べていく。
しばし呆然と美鶴の姿を見つめていたが、やがて自分がなにも身に着けていないことを思い出し、恥ずかしくなって もそもそと服を身に着けた。
「もうすぐ昼だ。私も久しぶりによく寝てしまったようだ。君が側にいてくれて安心したのだろうな。」
ゆかり が席に着くと、美鶴がうれしそうにそう言った。
その表情はいつもの美しく、毅然として、冷静な美鶴に戻っていた。
一方、ゆかり は動揺してどんな態度を取ったらいいのかもわからずにいた。
「・・・なんだか、先輩・・・随分と落ち着いてませんか?」
「そうだな。つきものが落ちたよう感じだ。」
美鶴が微笑みを浮かべてうなずく。
「なんかずるいですよ。一人で落ち着いちゃって。その・・・私たち、夕べ、あんなことになっちゃったのに・・・。」
ゆかり は情けない感じで声を絞り出す。恥ずかしくて身の置き場がなかった。
「自分の気持ちがはっきりしたからだろう。道ならぬ恋とはいえ、私は君を愛している。それがはっきりしたというだけで今は十分だ。」
自信たっぷりに「愛してる」とはっきり言われて、ゆかり はさらに怯んだ。
「私はなんだか、どんな顔したらいいのかもわからなくて混乱してます〜。」
美鶴の余裕が恨めしくて口を尖らせる。
「申し訳ない。君にはまた迷惑をかけてしまったな。」
「いや、別に迷惑ってこともないんですけど・・・。そのう・・・私たちって・・・これからどうしたらいいんですか・・・。」
「まずはニュクスを倒す。」
美鶴がきっぱりと告げた。その言葉に ゆかり はハッとした。
「それからゆっくり話し合おう。あと数日で人類の存亡をかけた戦いがある。私たちのことはそれを片付けてからで遅くないさ。時間はたっぷりある。」
そう、美鶴と一緒なら、どんな運命でも受け入れられる。そう心に決めたはずではなかったか。
改めて自分の心に問いかけてみる。・・・今でも自分の選択に後悔はなかった。
「でも、ニュクスとの戦いが終わったら、このことも全部忘れちゃうんですよね。」
「思い出すさ。・・・絶対に思い出して見せる。この気持ちを忘れられるものか。
仮に思い出せなくとも、私はまた君に恋するはずだ。私や君という人間が変わるわけではないのだから。」
「そっか・・・そうですね。今はまず未来を勝ち取る事が最優先ですもんね。」
ゆかり はそれを聞いてようやく気持ちが落ち着いてきた。
テーブルに置かれた紅茶を一口飲む。
「おいしい。先輩に教えてもらったこの味も、絶対に忘れられそうにない。」
それを見て美鶴が愛おしそうに微笑んだ。それから静かに、しかし力強い口調で告げた。
「この後、アイギスの取ったデータを元に、昨夜の戦闘を検証してみる。より効果的な戦術に変更する必要があ
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