後編
[6/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
言ってくれているのだから・・・。
(そうだ。私はこの人のことが好きなんだ。)
「ありがとう。君に気持ちを伝えられた。・・・もう、それだけで充分だ。これで心置きなくニュクスとの戦いに挑める。たとえどういう結果になったとしても、もう後悔はしない。」
美鶴は涙を浮かべたまま、無理に微笑んで見せた。
「先輩・・・。」
潤んだ眼で微笑む美鶴を見て、ゆかり の胸に迫ってくるものがあった。それはかけがえのない、とても大切なもののように思えた。
これまで思い込みで「有り得ない」と決めつけていたが、ここ最近、自分の心の中をもっとも大きく占めているのは間違いなく美鶴だった。
こうして二人でいると、なんだか美鶴以外のことはもうどうでも良くなってくる。
(そう、私たちにはもう時間がない。)
負けるつもりはないが、勝算は全くない。何かに迷って留まっている時ではないのだ。時間は有限で、しかも残りはあとわずかだ。かなり高い可能性で、世界はあと数日で終わってしまう。
(その時を美鶴先輩と迎えることに、ためらう理由があるのだろうか・・・。)
たとえどういう結果になるにせよ、後悔だけはしたくなかった。
それならば・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あー、もう! わかった!! 考えるのやめた!!!」
ゆかり はそう声を上げると、椅子ごと隣に移動し、がばっと美鶴を抱きしめた。どうしてよいのかわからないまま、半ばやけくそな行動だった。
暖かい・・・それが第一印象だった。シャワーを浴びたばかりの、いい匂いがする。
思いのほか気持ちよくて、心が安らぐ気がする。ずっと抱きしめていたいと思った。
「ゆかり・・・無理しなくても・・・。」
ゆかり の唐突な行動に、驚いたように身を固くして美鶴が言った。
「もうよくわかんないんですよ。・・・だから少し試してみましょう。」
しばらくそうして抱きしめていると、やがて美鶴がおずおずと ゆかり の背に手を回し、それから強く抱き返してきた。
「どんな感じですか・・・?」
「心地よいものだな。・・・誰かに抱きしめられるなど、何年ぶりだろう。最後にお母様に抱きしめられたのがいつかすら覚えていない。」
「正直、私もあんまり心地よくて戸惑ってます。なんか、ここのところプレッシャーで心がささくれ立っていたのが、すごく癒されていくみたいな気がします。」
ゆかり の言葉を聞いて安心したのか、美鶴の体の固さが取れてきた。その分、さらに抱き心地が良くなってくる。
そうして、お互いの存在を確かめるように、二人はただただじっと抱き合っていた。
どれだけ時間が経過しただろう。気づけば胸が高鳴っていた。二人の鼓動が重なる。
この高鳴りはいったい何なのか・・・。
体が火照って暑くなる。
抱き合ったまま、少し頭
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ