後編
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りだったが、美鶴は心ここにあらず と言った様子で、あっけなく話を流されてしまった。
(なんか、やっぱりテンションが低い。)
思い切って話を切り出してみることにした。
「どうしたんですか? ・・・さっきのことまだ気にしてます?」
「それは・・・まあ・・・。それもそうなんだが・・・。」
美鶴は少し困ったように口を濁す。
「もう、あんまり気にしないでくださいよ。こんなのお互い様だからこそ、仲間なんじゃないですか。それよりみんな無事でいられたことを喜びましょうよ。」
「いや、なんというか・・・私は君に助けられっぱなしだと思ってしまってな。」
ゆかり には目を向けようとせず、紅茶の湯気を見つめたまま話し続ける。
「先日、寮が桐条警備部の襲撃に合った時もそうだった。京都の河原で君に叩かれた時も・・・それに昨日も、私の負担を考えてみんなの意見を聞いてくれた。・・・私はいつも君に支えられてばかりいる。」
「大袈裟ですって。そんなことで落ち込まないでくださいよ。」
ゆかり の言葉に、美鶴は首を振った。
「いや、そうじゃないんだ。」
美鶴は思いつめていたことを吐き出すように語りだした。
「その・・・実は・・・ここのところ、君のことがいつも頭から離れないんだ。離れていると落ち着かなくなってくる。しかし、いっしょにいれば、つい君から目が離せなくなってしまう。まるで母親に縋りつく幼子のような状態だ。こんなことではいけない。しっかりしなければと思っているのに、君といると臆面もなく弱さをさらけ出してしまう。君に支えられ続けているうちに、私はすっかり弱くなってしまったのかもしれない。・・・いや、自分がもともと弱い人間だということに気づいてしまったのかもしれない。」
「ええっ?」
ゆかり は美鶴の吐露した思いもよらぬ言葉に動揺し、鼓動が早くなった。
「さっきも、部屋に戻ったら一人でいるのが辛くて・・・君にそばにいて欲しくなって・・・たまらずに電話してしまった。君を休ませてあげるべきだというのに・・・私は君に甘えてばかりだ。」
美鶴は己の頭をかきむしるように抱えた。
「本当に私はどうしてしまったんだ。情けない。今の私は、片時も君なしではいられないんだ。」
苦悩の表情を浮かべる美鶴を見ながら、ゆかり の頭には先日の『彼女』のにんまりとした笑い顔が浮かんでいた。
「ちょ・・・ちょっと、そんな・・・愛の告白みたいの・・・やめてくださいよ。」
ゆかり は慌てて冗談でごまかすように笑ってみせる。顔が赤くなり汗が浮き出てくる。
「愛の告白・・・・?」
美鶴が驚いたように顔を上げる。
「そうなのか?」
「いや、私に聞かれても・・・」
美鶴は ゆかり の顔をじっと見つめ、それから胸に手をやった。
「そうか・・・確かにそうだ・・・。私の代わりに君が攻撃を受
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