後編
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キが無く、なんでもできるように見える美鶴だが、良く知り合ってみればひどく不器用な面があることもわかってきた。そうしたことについては非常に素直であり、良くも悪くも、やはりお嬢様なのだと思う。
知り合った当初、ゆかり が反発を感じていた部分ですら、今にしてみればその不器用さに原因であったことが分かってきた。
それでも彼女は常にひたむきで、真っ直ぐで、毅然としていた。いつしか、ゆかり は、美鶴の力になれるのであれば、なんでもしたいと思うようになっていた。
通いなれた部屋に遠慮なく入ると、美鶴は先にシャワー室に入っていた。。
美鶴の部屋は ゆかり たちの部屋よりも広い。シャワーもついている。美鶴はそれを気にしていて「皆と同じ部屋で良かったんだが」と言い、 ゆかり は「私が卒業したら、代わりにこの部屋を使ってくれ」と言われたりもしている。華美ではないが高級な家具が置かれ、大型の液晶テレビやステレオセットもあった。カーテンやカーペットも別格だ。まるでホテルの部屋のようで、とても同じ寮と思えない。居心地は抜群だ。
広いベッドに腰を下ろすと、勝手にステレオを操作して静かな音楽を流し美鶴を待った。
ほんの2時間ほど前、命がけの戦いを繰り広げていたのだ。神経の高ぶりはなかなか治まらない。戦闘の記憶がフラッシュバックして、ともすると体に震えがくる。
思わずベットに倒れこんで布団に顔をうずめた。
かすかに美鶴のにおいがする。それが、心を癒してくれる気がして、ゆかり はしばらくそのままじっとしていた。
いつしかウトウトしかかったところで、シャワー室の扉が開く音がして、慌てて体を起こす。
美鶴が上品なネグリジェにガウンをまとった姿で出てきた。湯上りのしどけない姿に少し憂いを帯びた表情を浮かべており、それを見て ゆかり は妙に落ち着かない気分になった。
「先に浴びさせてもらった。」
美鶴は硬い声でそう言った。
その思い悩んだ様子が気になりつつ、交替して ゆかり がシャワーを浴びる。
汗を流すとさっぱりして頭がはっきりしてきた。
寝巻代わりのスウェットを着て出ていくと、美鶴がいつものように紅茶を入れてくれている。小ぶりなテーブルの椅子に座り、向かい合ってお茶を飲んだ。落ち着く良い香りがする。
「なんかここ最近、先輩に紅茶ばかりごちそうになってるんで、すっかり紅茶党になっちゃいましたよ。」
ゆかり は、なるべく明るい感じでいつも通りに話しかけてみた。
「でもこれ、たぶんすごい高価なお茶なんじゃないですか。」
「ああ・・・まあイギリスの名門紅茶だな。こちらではあまり手に入らないようだ。」
「そんなすごいもの、よくわかりもしないのに、私なんかがパカパカ飲んでたらイギリス人に怒られそうですよね。」
「そんなこと、気にする必要はないさ。」
冗談を言ったつも
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