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勇者戸希乃を信じてほしい
第一話
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よ、おい、おいってば」

 誰でしょう、私を勇者と呼ぶのは。
 考えてみれば私はまだ勇者らしいことしてませんよね。やったことといえば老人を一人突き飛ばしただけ。
 そんな私をまだ勇者と呼んでくれる人がいるなんて……。

 私は声のする方へのろのろと振り返ります。

 そこにはおじいちゃん……魔王さんのまとっていたローブがあって風にたなびいていました。
 中身はどこに?というかローブだけがここにあるとすると中身はストリーキング中ということに。

 いえ、中身はありました。
 よくよく見ればローブにくるまれるように何かがもぞもぞ動いています。

 私は恐る恐るローブをめくってみます。
 そこには……まるで生まれたばかりのような赤ちゃんがいたのです。

 おじいちゃんが赤ちゃんになった!?
 我ながらなにをバカなことを考えているんでしょう。

「俺だよ、魔王だよ」

 確かに目の前の赤ちゃんはそう名乗ります。
 バカな考え、当たってました。

「なんでおじいちゃんが赤ちゃんで魔王ちゃんなんですか!?」

「魔王ちゃんてなんだよ。まあ混乱するのも無理はないが、魔王は不死なのだ。なので殺されてもすぐに再生するのだよ」

 いやそれ死んでるよね!?

「いやそれ死んでるよね!?」

 頭で考えたことがそのまま口を突いて出てしまいました。

「細かいことはいいんだよ。大事なのは、魔王は滅びないということだ」

「ええっ!?じゃあ私の使命は果たせないってことですか!?」

「まあ本質的にはそうだな。だから歴代勇者たちは妥協案を採って来たのさ」

「どういうこと?」

「滅せないにしても一旦倒してしまえば、再び魔王としての力を振るえるようになるまでに時間がかかる。それで魔王を倒したってことにすれば、晴れて勇者は任務完了ってわけだ」

「……じゃあ歴代勇者はみんなあんなおじいちゃんを……」

「いや、そうでもないさ。今回は俺もいろいろ試してみて、その結果歳食っちまったが、いつもはもっと若い頃に軍団を動かしていたのさ」

「試したって、何を?」

「それをお前が気にする必要はないだろ?まあいろいろって言ったらいろいろなのさ」

 なんだろう、ちょっと気になる。

「さて、それでは腹が減った。飯にしよう」

「え、何?ご飯?」

「そうさ。赤ん坊ってのはなりが小さい分、溜め込めないからな。こまめに口にしなきゃならないんだ」

「あ、そっか……。王様にもらった保存食しかないけど、いい?」

「いいわけないだろ!赤ん坊ってのはまだ胃腸も弱いし、そもそも硬いものを噛み砕く歯も持ってないんだ。そんなもの、食えるわけない!」

「ご、ごめんなさい!……でもじゃあ何
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