前編
[1/8]
前書き [1]次 最後 [2]次話
「乙女が恋も知らずに死ねるもんですか。」
その時、ゆかり は熱弁をふるっていた。
彼女の前では最近お気に入りの紅茶が湯気を立てている。
ここはポロニアンモールの一画にある喫茶店「シャガール」。お洒落で落ち着いた雰囲気であり、ここで過ごせば自分の魅力まで上がるような気がすると学生の間でも評判の店だ。
ニュクスとの決戦を控えて日ごとに緊張感が高まる中、ゆかり は『彼女』と二人で、息抜きの為にポロニアンモールを訪れていた。
「絶対に勝って、生き延びて、バラ色の青春を送ってやるんだから。」
最後の戦いは目前に迫っていた。敵は圧倒的に強く、はっきり言って勝てる可能性は限りなく少ない。
しかし、それでも諦めたくはない。最後まで抗い続けたい。そのための戦いだ。負ければ人類は滅びるのだから・・・。
決戦は1月31日の影時間。戦えるのは特別課外活動部の7人と1匹のみ。他の誰にも頼ることはできない。
メンバー全員一致で、この戦いに挑むことを決めたのだ。同じ志の仲間がいることがこれほど心強いとは思ってもいなかった。
しかし決心を固めたとはいえ、常に不安感のとろ火に焼かれ続けている状態は過酷であり、ともすると心が折れそうになる。こんな生殺しの状態が続くなら、今すぐにでも決戦に挑んだ方がマシだ、と思ったりもした。ゆかり は己の怯む心に活を入れる為、ことさら前向きなセリフを吐き続けていた。そうでもしていなければ、膝をついて動けなくなってしまいそうだった。
「ゆかり は学校でも男子に人気があるんだから、その気になればいつでもカレシ作れるでしょ。選り取り見取りじゃん。」
それに対して、『彼女』はプレッシャーなどまるで無いかのようにのんびりとした調子で応じていた。
「そんなことないよ。第一 良く知りもしない人に人気があったとしても意味ないし・・・。」
ゆかり はその余裕のある態度が急に腹立たしくなってきて、『彼女』をやり込めてやりたくなった。
「そういうあんたの方こそどうなってんのよ。」
「何が・・・?」
『彼女』がキョトンとする。
「わかってるでしょ。例えば真田さん。女子にモテモテで、それこそ引く手あまたなのに、今まで全く興味を示してこなかった人なのよ。その真田さんが、あんたにだけは明らかに態度が違うでしょ。」
「そうかな?」
ゆかり の言葉にも、まるでどこ吹く風といった顔をしている。ゆかり はイライラをぶつけるように続けて言った。
「それに天田君だって、完全に意識しちゃって『あんたを守るのは自分だ』みたいな雰囲気出しまくってるじゃない。」
「天田君、可愛いよねー。」
相変わらず全く動じずに涼しい顔でジュースを飲む。
「亡くなった荒垣さんだって、強面で孤高の人だったのに、あんたにだけは熱い視線を送ってたし・・・。はっきり言ってうちの男子、総ナ
前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ