第1部
カザーブ〜ノアニール
ミオの過去
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たから、助けなきゃって思ってさ。それでなんとか皆を説得して旅に出たんだ」
そう言い終わると私は、辺り一面に咲くコスモスを眺めつつ、目を細めた。
「……お前もそういう目にあってたのか」
「ううん、私じゃなくて、村の人がね。十年以上前だったかな。私が小さいとき、一度この村に魔物が襲ってきたことがあるの」
まだ三〜四歳くらいだろうか。近所には同い年くらいの友達が沢山いて、男女関係なく毎日近くの山や森で遊んでいた頃だった。
そのころはまだ村の自警団も作られていなくて、村人たちは魔物を脅威とすら感じていなかった。けれどあるとき、村の誰も見たこともない凶悪な魔物が現れて、近くにいた村人を次々に襲った。
当時幼かった私はその場にいなかったので、それがどれくらいの被害だったのか実感できなかったが、親や周りの大人の話によると、その数は十数人に及んだらしい。そしてその被害者の八割は私の友達で、いつものように森に遊びに行った帰りに、たまたまその魔物に遭遇してしまったらしい。
私はというと、その日はちょうど風邪をひいてしまい、一日中家にいたので難を逃れたが、私を除くほとんどの子供は、皆犠牲となってしまったのだ。
あまりにも突然の出来事で、幼い私の心には友達を失った悲しみよりも、胸にぽっかりと空いた喪失感の方が強く残った。
それによく私を見ては、『運がよかったわね』とか、『○○ちゃんの分まで生きるんだよ』とか泣きながら言われたが、物心つく前なのでどうしても実感がわかなかった。
「それで、同い年くらいの友達が皆いなくなっちゃって。ほら、このへんってたくさんコスモスが咲いてるでしょ? ここに眠ってる子達が好きだった花なんだ」
皆で山に咲くコスモスを引っこ抜いて、よくここに植えてたっけ。そのうちに、いつの間にか種が出来て、芽を出し、毎年花を咲かすようになるまでの年月が経ってしまった。
「もしかしたら私も皆と一緒にここで眠ってたかもしれないんだ。でも、一人だけ生き残っちゃって、やるせなさって言うのかな? そういうのがずっと残ってて、そういうモヤモヤした思いを埋めるにはどうしたらいいかなってずっと考えてたら、あるとき師匠が村にやって来たの」
「師匠?」
「あ、私が勝手に呼んでただけなんだけどね。その人は武闘家で、世界中を旅しててすごく強かったらしいんだけど、病気になっちゃって、たまたまたどり着いたこの村で療養することにしたの」
師匠は病に付しながらも、一人で日常生活を送れるくらいは動けていたので、村にやって来て間もないうちに、私の家の隣にあった空き家を改築した。
そしてあろうことか、武術道場を作ってしまったのだ。
「そのあと師匠は自分で道場を開いて、村の人に武術を教えよ
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