第1部
カザーブ〜ノアニール
ミオの過去
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、はあ、と大きく溜め息をついた。
「俺が戻ったときには宿の鍵がかかっていた。おそらくお前の家に泊まると思ったんだろ」
ああ、そっか。きっと私の家に来た人が気を効かせて、宿屋にユウリたちのことを伝えてくれたんだ。実際ナギとシーラはうちに泊まったも同然だし、まさか勇者一人だけ宿に戻るとは思わなかったのだろう。
「それじゃあもう皆寝てるし、うちにおいでよ。多分ユウリ一人が寝れるスペースならあるよ」
だが彼は動こうとしない。いや、そもそも私の方すら見ていない。
別にこんなところで考え事なんかしなくてもいいのに、などと思いながらも口には出さず、ユウリの顔の前で手を振ってみる。すると、ようやくこっちを見てくれたではないか。そして私はふと気づく。
「あれ……? ユウリ、顔色悪い?」
頼れるのは月の光だけなのではっきりとはわからないが、なんとなく具合が悪そうに見える。私は小さな怒りを忘れ、ユウリの顔をまじまじと見た。
「何じろじろ見てるんだ」
不満の声が聞こえるが、気にせず私は再び手を伸ばし、ユウリの頬にそっと触れてみた。
「!?」
「冷たっ!」
私は思わず伸ばした手を引っ込めた。想像以上に冷たかったからだ。
「い、いきなりなんだ!!」
「ユウリ、やっぱり今すぐ帰ろうよ。体すっごく冷えてるし、具合悪くなったら大変だよ」
「っ……!」
それきり彼は何も言わず、私が話しかけても視線をそらしたままだ。
「疲れたでしょ。うちに帰って休もうよ」
「……」
「ねえ、ユウリってば」
「……」
私の問いに無言で返すユウリ。あんまりにもしつこいから、怒ってるんだろうか。
でも今はそんなことをいっていられない。こうなったら引っ張ってでも連れていこうかと立ち上がろうとしたとき、急にユウリが口を開いた。
「お前に聞きたいことがある」
「え?」
ピタッ、と動きを止める私。
「何でお前……俺と旅をしようと思ったんだ?」
唐突に話を振られ、私は動揺した。ユウリは私の心中など知る由もなく、淡々と話を続ける。
「あんな平和ボケしてるような奴らが周りにいて……。こんな、魔王を退治するとか馬鹿げたことしないで、ずっとここで暮らせば良かったんじゃないのか?」
ユウリがこんなことを聞いてくるのは初めてだ。私に興味を持ってくれているってことなのだろうか?
とはいえ、魔王退治を『馬鹿げたこと』と言ったのが引っ掛かる。勇者が魔王を倒すのは当然の使命だと思っていた私は、正直面食らってしまった。
「えっと……。それは最初家族の皆に言われたよ。そんな危険なことするなら、家でずっと暮らしていけばいいじゃない、って。でも、世界のどこかで魔物に遭遇して苦しんでる人がこの村以外にもいるってわかっ
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