第1部
カザーブ〜ノアニール
ミオの過去
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待ってるからさ」
私は笑顔で返した。
「うん、もちろん。またユウリたちを招待するよ」
そう言うと、お母さんは私を優しく抱きしめてくれた。また明日からこのぬくもりとは当分離れなきゃならないんだ。そう思うとどうにも離れ難いなってしまい、しばらく甘えた子供のように、お母さんの胸に抱かれたままその場から動けなかった。
「ほら。いつまでも子供みたいなことしてないで、早く休みな」
ぽんぽんと肩を叩かれ、私ははっとしてお母さんから離れた。
お母さんにユウリの事を聞いたら、しばらく前に外に出ていったのを見かけたそうだ。宿に戻るとは聞いてなかったので、そのうち戻っては来るだろうとは言うが、すっかり目が冴えてしまった私は彼を探すことにした。
玄関を出ると、青白く輝く月と澄み切った満天の星空が私を出迎えてくれた。その代わり、秋に別れを告げるかのような肌寒さが私の体温を少しずつ奪っていく。
とりあえず、彼が夜風に当たりそうな場所を考えて、近くの高台に向かうことにした。高台にはお墓がいくつかあるが、そこから見下ろすと、コスモスの花が咲いているので景色を見るには絶好の場所である。実際私が小さい頃も、よくその高台に登ってコスモス畑を眺めていた。
高台に着いた途端、私は意外にもユウリと好みが一致していることを実感した。まさか本当にいるとは。しかもそこの木に寄り掛かって腰を下ろしている。
私はユウリが寝ているのかと思い、後ろに回り込みつつゆっくりと近づいて、ユウリの顔を覗き込んでみた。すると彼は起きていたらしく、私の気配に気づいていたのか、特にこちらを見ることなく静かに息を吐いた。
「……なんだ。お前か」
その後、驚く素振りもなく、いつもの仏頂面でぼんやりと景色を眺めている。驚かせるつもりはなかったが、こうも無反応だとなんとなく悔しい。
「ユウリこそ、どうしてこんなところに?」
私はユウリの隣に座りこみ、尋ねた。
「別に何だっていいだろ。俺はああいう大人数が集まる場所にいるのが苦手なだけだ」
「え、じゃあ途中で抜け出したってことだよね。こんな寒空の下、ひょっとして何時間もずっと一人でいたってわけ? 風邪引いちゃうよ!」
「ふん、余計なお世話だ」
そういうと、彼は顔を背けた。
「でも、もともと夕食に誘ったのは私だし、ユウリもそういう場所が苦手だったんなら言ってくれればよかったのに」
「別にお前には関係ないだろ。俺は今考え事をしてるんだ。邪魔するなら帰れ」
えー、でもなあ。さっき家から出ただけでこんなに寒さを感じてるのに、ユウリはそれよりずっと前からここにいるんだから、相当体が冷えてると思う。
「宿はどうしたの? 私と別れたときにとったんじゃないの?」
私が聞くとユウリは
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