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提督「……辞めたい」
第一話 提督の決断
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 天気は雨


 天気は雨。土砂降りだ。朝礼ではまた休日と伝え、やはりいろんなものを投げつけられた反応だったが、心のなかではやっぱり昨日休日にして遠征しなくてよかったと思った。

 彼女達が沈むことはあってはならない。彼女達には前任によって潰されてきた喜怒哀楽が出来る人生を歩んでもらはなければならない。仲間達と清々しい朝を迎え、仲間達と一緒に美味い飯を食って下らない話をして、共に目標を達成して、時に喜び、ぶつかり合い、哀しみ、そして生きていて楽しいと思ってほしい。だからそれまで、俺は絶対に誰も轟沈させやしない。

 終戦まで、絶対誰も死なせない





 ──嘘に


 「……ウソデス。ぜったいありえないデスっ。アイツがこんなこと書くわけが……っ」

 
 頁を捲る度に、目に入ってくる、提督が記した当時の心境と活動記録。

 口では思わず否定してしまうが、心の奥底でどんどんと蘇ってくる記憶と共に、当時の落ちぶれていた鎮守府が改善されていった事と辻褄が合っていく。





○月△×日 天気は晴れ

 

 早速、金剛姉妹の噂のお茶会を覗いてみた。扉の隙間から覗いて見ると本当に和気藹々としていた。

 そして同時に羨ましいと思った。俺には兄弟が居ない。小さい頃からこういう家族ながらの温かな雰囲気を感じられるのは父や母、お祖父さん、お祖母さんと一緒に居るときぐらいなものだった。しかし、その全員が深海の奴等の襲撃によって亡くなり、今や天涯孤独の身だ。
 だから、この雰囲気が羨ましかった。本当に輝いて見えた。

 あの後は結局覗いていたのが見つかり、主に金剛と比叡から殴られたり蹴られたりした。まあ覗いてたのが悪かったし、別にここで愚痴を書くつもりもないが、毎日こういう理由もなくサンドバッグにされるのは理不尽でならないと俺は思う。

 それでも俺は例え上官への暴力という軍規違反を犯しているあいつらを本部には報告しない。あいつらは真っ当な人生を歩むべきだ。

 そういえばもうすぐで監察官が来るんだった。明日の朝礼では厳しく監察官のいる間は暴力をしないように言っておこう。でないとやらかしかねないからな。

 いつか俺もあのお茶会に参加したいな。でも今のままでは叶わない夢。

 願わくば、艦娘と良好な関係を結べるように。ここで神に静かに願っておこう。 




 ──ワ、タシは……


「……っ」


(──!)



 最後の文章を読んだ瞬間、気付いたら金剛はその提督の日誌を両手で大事に抱え、執務室を飛び出していった。


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