MR編
百五十九話 苦闘
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の!!」
「ねぇ、援護止まっちゃったんだけど後衛大丈……大丈夫じゃないね!!?どさくさに紛れて何してんのあのエロ男子!!?」
「アイリさん!?敵来てます!前見てくださいま……まままマジでリョウさんなにしてるんですかぁ!!!?」
「ねぇちょっと聞いて!!?」
てんやわんやである。後で絶対に彼に文句を言おうと何故か戦場中に向けて大声でリョウを擁護する羽目になったアスナは固く心に決めた。
────
「なぁにをわちゃわちゃやってんだあいつ等は……」
そんな事に鳴っているとは露知らず、リョウはと言えば何故か突然何事かを言い合い始めたメンバーを見てやや呆れたように眉を顰める、何やらいろいろと不吉な発言が聞こえたような気もしないでもないが……一先ず今は良い。
「で?ちったぁ落ち着きましたかよお嬢ちゃん?」
「お嬢ちゃんはやめてってばぁ……」
凡そ普段彼女の物とは思えないほど弱弱しい声でそう言ったユウキの目は元々深い紅玉のようなそれが揺れ動くように潤み、つい先程まで泣きそうになっていた影響がありありと見える。少し虚ろな様子で自分を見上げるその瞳と真っすぐに目が合ってしまったリョウは一瞬だけ物凄く嫌そうな顔をした後、何ともやり難そうに曖昧な表情を浮かべた。
「くそ……おいおい、まぁ、なぁ?分かるけどよ……泣くほどのこっちゃねぇだろ、命がかかってるわけでもねぇし、こんなもん後で思い返しゃ、GMにぶーぶー文句言いながら笑い話にするような話だぜ?楽しむところだろ寧ろ……」
きっとこのダンジョンを作った側も別に悪意があったわけではなく、精々味方同士で攻撃しあって後から物笑いの種にしてもらうような、歴代のRPGにもありがちなギミックの一つとして作った仕掛けだったのだろう、ならばその意図に乗ってやることも一興であるのだろうとリョウは思う。普段あれほどこの世界を楽しんでいる彼女なのだ、そのくらいの楽しみ方は得できるだろうと思ったのだが……
「うん……ゴメン……ごめんね……」
「……いや、別に責めようって訳じゃねぇけどよ……」
相変わらず少し湿った声で言った彼女は、リョウから目を逸らして黙り込んでいて、ますますいたたまれない気持ちになる。
「……あーっ、だから……」
何かを言いかけて、しかし彼はそれ以上言う事無く言葉を切った。ユウキの周囲に青色のエフェクトが灯るのを見止めた身体。即座に離れると、起き上がろうとした彼女の身体を、地面から湧き上がった水の縄が拘束する。アスナの《流水縛鎖》だ。まるで重罪を犯した犯罪者のようにしおらしい顔で地面に縫い付けられたユウキの顔を一瞥して、仕方なく前線に向けてリョウは歩き出し──
──即座に反転して戻ってくると、相変わらずを横向いたままの彼女の真上から、人差し指でその頬を吐いた
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