MR編
百五十九話 苦闘
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た距離はあっという間に消え、大柄な青年が黒い靄に犯された菫色の少女に向けて肉薄する。接近したリョウはいきなり“武器を投げ捨てた”。
「リョウ!?何を──」
「ふっ!!」
「ふぇっ!?」
硬直したユウキの身体を潜り抜けながらリョウはユウキの襟元と腕の布を掴む。素手で拘束する?確かに一度リョウに腕や袖を掴まれるとSTR的にユウキ個人の力で彼の手から逃れるのは殆ど不可能だ。とはいえ機動力の高いユウキを素手で捕える事はさしものリョウでも難易度が高い。だからあの方法は文字通り「今」しか使えない緊急の……そして最初で最後のチャンス……いや、と言うかちょっと待て、あの位置だとリョウの右手は鎧の中のインナーを掴んでいるから彼女鎖骨、下手をするとそれよりやや下の部分を素手で──
「ちょっとリョウ何処触って──!!」
「いっくぜぇ、原先直伝──!」
半ギレで叫びかけたアスナを無視してリョウは更に動作する。左腕がフリーな関係上、硬直が融けるよりも前に速やかに動作を完了させるつもりなのだ、それにしてもあの体制、何故だかどこかで見たような……?そう思った瞬間リョウはユウキに密着した姿勢のまま、彼女の後ろに向けて自らの右足を思いっきり振り上げた。
「え、ちょとまっ──!」
「“大外刈り”ィ!!」
「むきゃんっ!!?」
アスナが止める間もなく、奇妙な悲鳴を上げてユウキの身体が背中から地面に押し倒された。
大外刈り。
所謂ポピュラーな柔道技の一つで、中高のカリキュラムでも学校によっては習う事もある(現に、リョウはこれを帰還者学校で習ったのだろう、原というのはあの学校の高等学年を担当する体育の教師だ)この技は、相手の不意を突くことができればほぼほぼ相手を地面に押し倒すことが出来る。ただだからと言って、この状況で、というかそもそもALOの中に学校で習った柔道技を持ち込むとは思わず、余りの事にアスナが絶句している間にリョウはあっという間に体制を整えてユウキの両手足を自らの手足で地面に仰向けに拘束する、ジタバタと暴れようとする彼女の身体も、流石にあの体制で圧倒的なSTRを誇るリョウに上から抑え込まれてはどうしようもない……ないのだが……なんというか……
「っと!大人しくしろオラぁ!てか泣くんじゃねぇよお前は!」
「ご、ごめ……」
あの粗野なところの強い彼が暴れる半泣きの少女の身体を無理矢理押さえつけている図は……明らかな犯罪臭がした。一瞬再びレイピアに伸びそうになった手を何とか自制してアスナは息を吐くが……しかしその瞬間、別の所でカラーンと、杖落とす乾いた音が響いた。
「……え、と……?え……?」
「待ってサチ!?違うの!ちょっと、なんていうかやっぱりユウキのこと抑えてもらわないといけなくて、だから……あれは……そう!仕方ない
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