MR編
百五十九話 苦闘
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キの動作が全体を通して並みのプレイヤーよりも早すぎるからである。
恐らくは元のプレイヤーの動きをトレースして再現できるようになっているのだろう。本人が望まずに攻撃してきているはずなのに、ユウキの攻撃には元の彼女のキレとスピードがそのまま乗っている。全く底意地の悪いシステムだ。そうはいっても……
「それならそれで、尚更加減とか言ってらん、ないっ！！」
体制を一機に前傾姿勢へと持っていき、切先を下段からやや上向きに正面に向ける。発生したオレンジ色のライトエフェクトに導かれるようにやや開いたユウキとの間合いを一気にアイリの身体が駆け抜ける。
片手剣 突進技 《レイジスパイク》
ソニックリープと比べ、下段からの突き技として体制を崩さず防ぐことが難しいという性質を持つこの技は、ユウキを足止めする以上に倒すことを目的に放たれたものだ。アバターが彼女の自由にならない以上、一度彼女をリメントライトにしてでも止めた方がパーティの被害としても、何夜ユウキ自身の精神衛生上も良いだろうと考えたのである。だがユウキの身体を操る何者かは耐性を崩すリスクを冒してアイリの攻撃を防御することよりも、反撃のチャンスを潰してでも攻撃を回避する事を選択したらしかった。下段から迫る突きを体を高く跳ね上げて躱すと、そのまま前方宙がえりの要領でアイリの頭の上を飛び越えて彼女の後方に着地する。
「やばっ！？」
硬直から回復したアイリが、慌ててその後姿を追おうとするがしかし、アイリの後ろにいたシリカに今まさしく迫ろうとしているスケルトンを、追おうとした足が前に出る寸前に彼女の視界がとらえた。
「ッでむ！アスナ、ゴメンお願い！！」
「うん！了解！！」
あの個体数をシリカ一人で捌くのは流石に荷が勝つ。そう判断して、アイリは急旋回して彼女のカバーに走る。一方猛然と走るユウキの視界の先には、やむを得ずアクアバインドの詠唱を中断したアスナの姿がある。
「ッ！！」
「っ、あ、アスナ……」
「大丈夫！大丈夫だから！！」
切りかかってきたユウキの剣を、クイックチェンジに寄って寸前で呼び出した細剣が受け止める。その状況を最後まで申し訳なさそうに見ていたアイリに目だけで頷いて、戦闘への集中を促す。此処に来て、リーダーとしてシリカの負担が大きくなっていることが少し仇になっている。ユウキが抜け、前衛が一人になってしまったことでキリトの被ダメージ率が上がっている、その回復と、今も詠唱中のサチに敵を近づけないためのはぐれMobの対処と自衛に、さらにアヌビスの石化を解除するためのヒント探しをすべて同時に行わなければならない事で、シリカはパンク寸前の筈だ。そのカバーで、必然的にアイリの手も塞がる。それでも初見の今戦線が崩壊しないでいるのは、大多数のMobを引き受けてくれるリョ
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