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剣製と冬の少女、異世界へ跳ぶ
074話 記憶巡り編 とある視点で見る記憶 その1
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僕は魔術を手段として使っているから、魔術使いって言った方が聞こえはいいかな?』

それから切嗣さんは士郎さんに魔術の指南を始めた。
でも、そこでエヴァちゃんが言葉を発した。

「…………しかし、この光景を見るのは二回目だが、魔術というものを知った今となってはこの男は相当士郎には魔術の世界には入ってほしくなかったのだろうな…」
「え? それってどういう事? エヴァちゃん……」
「なに……魔術回路は一度生成できれば後はオン・オフが可能だというのに、士郎には一から何度も魔術回路を作らせるという遠回りな方法しか教えなかったんだよ。しかも、この時にはまだ士郎の魔術の特異性には気づいていなかったために強化とか変化、解析といった基本的な魔術しか教えなかったんだ」

なるほどー。
それで士郎さんはそれを苦しみながらも延々と繰り返していたわけか…。
これは複線かな? たとえば痛みに慣れるっていうのとか、後は体が副作用で頑丈になるとか…。

まぁ、士郎さんとイリヤさんとエヴァちゃん……そしてこのかや刹那さんとかによる後々のネタバレがされない限り、今は考えても詮無い事なので先を見ていこう。
それから家の家事がある程度士郎さんができるようになってくると切嗣さんは何度か旅行に出かけるようになった。
士郎さんには目的は話さなかったけど、帰ってくるたびになにかしらのお土産を持ってきていたのはなんだったんだろう…?
そして、そこでなにかしらイリヤさんが辛そうな表情になっていたのをわたしは見逃さなかった。
もしかして、切嗣さんはイリヤさんの事を迎えに行こうとしていた……?
それでも、何度も失敗しては途方にくれながらも逃げ帰ってくるしかなかった……?

もしわたしのその考えが当たっていたとしたら、それはどうしようもない絶望感だっただろうな…。
それで帰ってくると士郎さんの顔を見ては空元気になっていたって考えたら泣きたくなるね。
しかも少しずつ切嗣さんの顔が痩せてきていて、身体が衰えてきているのはあきらか。
死期が近いのかもしれない……。


そして士郎さんが引き取られて五年が経過したある月が満月で夜が明るい晩の光景が映し出された。
切嗣さんはもう歩くことも困難なくらいに老衰している感じでわたしから見てもいつ死んでしまってもおかしくない感じだった。
それが今なんだと気づいた。
切嗣さんは士郎さんに語る。

『……僕はね、正義の味方を目指していたんだよ』
『なんだよ? 目指してったってことはもうあきらめちまったのか?』
『ははは、正義の味方には年齢制限があってね……もう大人の僕はなれないんだよ』
『そっか……うん。それじゃしょうがないから俺が代わりに正義の味方になってやるよ。爺さんは大人だからもう無理だけど俺なら大丈夫だろ?』

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