第二章
[8]前話 [2]次話
「だからな」
「その弓でだな」
「?国が出て来たらな」
まさにその時はというのだ。
「即座に成敗し」
「一族の女達を護るか」
「賊でも妖怪でも一族の者を攫われるなぞ名折れ」
内藤は酒を飲みつつ言い切った。
「それが武士であろうとな、ましてや」
「相手が賊や妖怪なら」
「尚更よ、何があろうともな」
「妖怪にはか」
「女共に指一本触れさせぬ」
不安からさらにだった、彼は武士の心を湧き上がらせてだった。
そのうえで時が来ると一族郎党を連れて甲斐から都に向かった、道中は甲斐から山道ばかりで内藤は始終警戒していた。
それで一族の男衆にこう言っていた。
「山に出て来る柄の悪そうな者なぞだ」
「賊しかないですね」
「その様な者は」
「たまに樵や狩人がいますが」
「それに山の民が」
「そうした者の顔や身なりは普通だ」
山で働いている者達はというのだ。
「だが賊は違うな」
「はい、粗末な武器を持ち」
「そして身なりも如何にも柄が悪そうで」
「顔つきも悪いです」
「実に」
「それですぐにわかりますな」
「そうした者達を見れば」
すぐにというのだ。
「身構えよ、そしてな」
「はい、一族の男皆で」
「妖怪を成敗する」
「そうしますな」
「左様、妖怪でもな」
例えそう言われる存在が出て来てもとだ、内藤は言った。
「武士に勝てるか」
「かつて源朝臣殿は鵺を成敗しております」
「俵藤太殿は大百足を」
「それを考えれば」
「我等に出来ぬことはありませぬ」
「妖怪は札や念仏に弱いが」
即ち神仏にというのだ。
「しかしな」
「武芸にも弱い」
「刀にも」
「そして弓矢にも」
「だから臆することはない」
決してとだ、一族の者達に告げた。
「よいな、それではじゃ」
「はい、若しその?国が出てくれば」
「その時はですな」
「即座に成敗し」
「一族の女達を護りますな」
「妖怪なぞに一族の女を奪われたなぞ名折れ」
内藤は強い声で言った。
「それは賊達でも同じであるが」
「妖怪も然り」
「だからですな」
「何があろうと何が出ようと護る」
「そうして都に行きますな」
「そうするぞ」
こう言ってだった、そのうえで。
内藤は一族の者達を連れて山道を進んでいった、だが。
いよいよ山道を出ようという時に一族の若い者が大きな猿そっくりの姿のものを山の中に見た、それでだった。
その者はすぐに内藤のところに来てそれで話した。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ﾍﾟｰｼﾞ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿ｻｲﾄ〜
利用規約/ﾌﾟﾗｲﾊﾞｼｰﾎﾟﾘｼｰ
利用ﾏﾆｭｱﾙ/ﾍﾙﾌﾟ/ｶﾞｲﾄﾞﾗｲﾝ
お問い合わせ
2024 肥前のﾎﾟﾁ
しおりを解除