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雲に隠れた月は朧げに聖なる光を放つ
第九話 シアとミーナ
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みるが、元々温厚で平和的な兎人族と魔法を使える訓練された帝国兵では比べるまでもない歴然とした戦力差があり、気がつけば半数以上が捕らわれるか殺されてしまったと言う。

一族全滅を避けるために必死に逃げ続け、ライセン大峡谷にたどり着いた彼らは、苦肉の策として峡谷へと逃げ込んだ。流石に、魔法の使えない峡谷にまで帝国兵も追って来ないだろうし、ほとぼりが冷めていなくなるのを待とうとしたのである。魔物に襲われるのと帝国兵がいなくなるのとどちらが早いかという賭けだった。

しかし、予測に反して帝国兵は一向に撤退しようとはしなかった。小隊が峡谷の出入り口である階段状に加工された崖の入口に陣取り、兎人族が魔物に襲われ出てくるのを待つことにしたのだ。

そうこうしている内に、案の定、魔物が襲来した。もう無理だと帝国に投降しようとしたが、峡谷から逃がすものかと魔物が回り込み、ハウリア族は峡谷の奥へと逃げるしかなかった。そうやって、追い立てられるように峡谷を逃げ惑い……

「‥‥俺たちを見つけた、と」

「はい‥‥最初は六十人はいた家族も、今は四十人程しかいません‥‥。男は基本的にその場で見せしめのように殺され、女は帝国兵にその場で犯される‥‥そんな状況です」

「このままでは全滅してしまいます。どうか助けて下さい!助けてくれるなら何でもしますから!!」

「シア‥‥‥ごめんなさい。この娘、美人だけど残念なところがあって‥‥」

シアは残念美人で、ミーナはしっかり者。把握した。

「んで?蜂起どうすんのよ」

「助けるに決まってるだろお?」

「デスヨネー」

一応確認をしたが、即答で返ってきた。

「まあ‥‥助けるってことで」

「ほ、本当ですか!?」

「耳元で叫ぶな残念ウサギ」

ハジメがたまたま近くにいたらしく、うっとおしそうにシッシッと手を振る。

「残念美人か‥‥ミレディだな」

遠い目をするオスカー。

「ミーナちゃんもシアちゃんも可愛い‥‥これは弄りがいがあるな‥‥」

「ん‥‥楽しみ」

聖とユエが悪そうな笑顔を浮かべる。俺と拓人はアイコンタクト。互いの心情を察して苦笑いした。

「いつも通りですね拓人さん」

「いつも通りですなコウさん」

「そんなことより?」

「「おうどん食べたい」」

「だが俺はうどんが嫌いだあ!」

「だがもっと嫌いなのは‥‥」

「「無礼な襲撃者だよなあ?」」

そう言って俺はツェリスカを、拓人は戦車隊の砲台を襲撃者に向ける。勿論その先にはティラノモドキがいる。

「「ギャアア!?」」

頭が二つなので声も二つだ。

「吹っ飛べやあ!!」

「撃ち方始めえ!!」

ドガアン!!

ダンッ!ダンッ!
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