第8章:拓かれる可能性
第234話「可能性の半身」
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理力を放つ。
“性質”をモロに受け、優奈の左手も無残に潰れる。
「っづ……!」
だが、これで二人の神とその“天使”達を倒せた。
一人の両手を犠牲にこの戦果はかなり大きいと言えるだろう。
「優奈!」
「……このくらい、平気……!優輝はもっと酷い状態で戦い続けたんだから……!」
痛みがない訳ではない。両手が使えなくなった優奈は顔を顰めていた。
それでも、優奈は戦う姿勢を止めない。
「右手は完全に焼け落ちて、左手は原型がないほどぐちゃぐちゃにひしゃげた。……でも、治る可能性はゼロじゃない」
「何を……」
「不完全とはいえ、私は優輝の神としての力をある程度扱えるの。……神の権能さえあれば、放置しても治っていくわ」
そういうと、優奈は理力を手へと流す。
それだけで、治療不可に見える手が少しずつとはいえ治り始めた。
「ッ……!」
「ちょっ、帝?別に、治るわよ?」
「んなの関係ねぇ!……王の財宝の……この薬なら……!」
だが、帝は見てられないとばかりに、回復魔法を使いながら王の財宝から回復薬を取り出し、それを優奈の再生し始めた手に掛けた。
「これで、治るのも早くなるはずだ」
「別にこんな事しなくても……」
「関係ないって言っただろ」
低いトーンで言われ、さすがに優奈も何事かと帝に向き直る。
「俺は馬鹿だ。概念とか、役割だとか、そういった複雑な事を言われても、半分までしか理解できない。……これでも以前は“踏み台転生者”な事をやってたんだ。自分の馬鹿さ加減には呆れすらあるほどだ」
「………」
「……でもな、それでも、譲れないモノがあるんだよ……!!」
見る見るうちに優奈の手が治っていく。
それを何度か横目で見ながら、優奈は帝の言葉に耳を傾ける。
「もっと、自分を労わってくれ……!俺は、お前に傷ついてほしくないんだ……!」
「帝……」
神界だからこそ、帝の強い“意志”が言葉に乗って伝わってくる。
必死で、切実で、だけど自分にはどうしようもない、そんなもどかしい感情が。
「俺は!お前が―――」
「―――それ以上は、ダメだよ」
……故に、優奈は全て吐き出そうとする帝を止める。
「……それ以上は、ちゃんとここから脱出してから、ね?」
「…………ぁ、ああ……」
困ったように微笑む優奈。
帝も、自分が今言わなくてもいい事を言いそうだったなと、その言葉を呑み込む。
「さぁ、話を戻す……前に、もう一人残っていたわね」
「……さっきの槍使いか」
「ええ。白兵戦に強い“性質”を持ってる。……だから、さっきまでの諸刃の剣のような戦い方は通じないわ」
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