第8章:拓かれる可能性
第234話「可能性の半身」
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「その通り、神界の神だったわ」
エアの推測を肯定するように、優奈は言葉を繋ぐ。
「なっ……!?」
「でも、ついさっき言った通り、今の優輝は人間。神の頃の記憶はないし、力もない。残っているのは、“性質”のみって訳。当然、自覚もなかったわ」
〈……しかし、その“性質”によって生まれた貴女は……〉
「そう。覚えてるって訳」
記憶がないのは、単に忘れている訳ではない。
その部分が消失しているのも同然なのだ。
だからこそ、本来であれば優輝は決して神界の神であった事を思い出せない。
だが、“性質”は記憶を失う以前から変わっていない。
それが変わっていないのであれば、神であった頃の記憶も完全には消えていない。
故に、そこから生まれた優奈は、優輝の持っていない記憶と知識を持っていた。
「志導優奈という存在自体は、いわば“優輝が女性だった可能性”なの。尤も、性別が違うだけで性格も色々変わってくるのだけどね」
〈……ですが、それだけではないはずです。“役割”と、先程は言っていましたね?〉
「……さすがに耳聡いわね、エアは」
帝を助けに現れた時、確かに優奈はそう言っていた。
そして、その“役割”を終えたと言う事も。
「私の“役割”……それは、優輝に神としての力や記憶を取り戻してもらう事よ。まぁ、“役割”と言っても特に何もする必要はなかったのだけどね」
〈その“役割”を終えたという事は……〉
「いいえ。まだ優輝は神に返り咲いていない。優輝の“可能性”は潰されたわ。他ならぬイリスによってね。記憶だけはある程度戻ったみたいだけど」
「あいつが、やられた……?」
優輝が負けた事に、今まで会話に入れていなかった帝が反応する。
優輝の強さを知っているからこそ、衝撃だった。
「み、皆は……?」
「何とか脱出したわ。優輝は、皆を確実に逃がすために残って戦う事を選んだのよ。……そして、倒れる前に私を分離させた。他でもない、孤立した貴方を助けるために」
「………」
優輝が既に倒れた事、皆を逃がすために殿を務めた事。
何より、自分を助けるためにここまで来た事に、帝は情報を呑み込めずに沈黙する。
「優輝は信じているのよ。貴方を、皆を。……例え、自分が倒されようと、敵の手に堕ちようとも、皆が立ち上がるのをね」
〈……彼は、ずっと一人で全てを背負っていました。戦力として頼っても、心の拠り所として誰かを頼る事はありませんでした。……そんな彼が……?〉
「……よく見てるわね、ホント。帝を支えているだけあるわ。……その通り、優輝は今度こそ心から皆を頼った。皆の“可能性”を信じて」
そこまで話して、優奈は何かに気付いたように振り返る。
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