第二十一章
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「例え炎は通じずとも」
「それでもですか」
「そうよ、何があろうともね」
「そうですか、ではどうして私を倒すのでしょうか」
炎が通じずともとだ、人形師は自身の炎を打ち消されても余裕を以ている紗耶香に対して彼もまた余裕を以て尋ねた。
「一体」
「簡単なことよ、私の力は炎だけではないから」
それでというのだ。
「私には様々な力があるのだから」
「様々な術がですか」
「使えるから」
「それで、ですか」
「貴方の糸にも勝つわ」
「ではどうして勝たれますか」
「私が魔術を学んだイギリスでは医学は経験論が主流よ」
こう言いつつだ、紗耶香は。
今度は無数の青い氷の刃を自身の周りに出し人形師に対して一斉に放った、すると人形師は自分の周りに張っていた蜘蛛の巣を己の前にやった。そのうえで。
氷の刃達を全て絡め取りそうして防いだ、人形師はここでまた言った。
「氷もです」
「無理ね」
「この通りです」
「そうね、貴方をそう簡単に倒せるとは思っていないわ」
「倒せるといっても」
「そうよ、こうしてね」
右手から赤い雷の鞭を出してそれで再び蜘蛛の巣を張った人形師に向けて振るうが人形師は左手に赤い糸の帯を放ち相殺してみせた、雷も防がれたが。
紗耶香はまだ悠然としていてだ、次は。
左手を下から上に思い切り振り上げてそこから小型の銀色の竜巻を出した、その竜巻に対して。
人形師は眉を嫌そうに動かした、そうして。
右手から糸の帯を放ったがその帯は自分に向かって突き進む竜巻に為す術もなく散り散りに砕かれ微塵もなくなり。
人形師は咄嗟に上に跳び逃げた、だがそこに。
紗耶香はまた竜巻を放った、その竜巻は一つではなく。
三つあった、しかもその色は銀色ではなく紫色だった。人形師はその色を見て咄嗟に察した。
「まさか」
「そのまさかよ」
紗耶香はその人形師の言葉に応えた。
「察しがいいわね」
「毒が入っていますか」
「確かに貴方の糸は恐ろしいわ」
絡め取ればその相手の身体を動けなくするだけでなく魂もそうして操る者のものにしてしまうそれはというのだ。
「私とて受ければそれで終わりよ、けれど」
「糸は風には弱い」
「そうだったわ、炎や氷や雷を防げる様なものでも」
絡め取り相殺してだ。
「風、しかも強い力が常に回転して荒れ狂いつつ突き進んでくる竜巻にはどうかしら」
「そういうことですね」
「そうよ、そう簡単にはね」
それこそというのだ。
「立ち撃ち出来ないわね」
「はい、これだけの強さの竜巻には」
「そうね、しかもね」
紗耶香は上を六十度程見上げその視線の先にいる相手に話した。
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