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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第20話:一矢は報いる意志
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げ弦十郎の元へと向かった。
 それを見て奏と響も立ち上がり颯人の後に続いた。特に奏は、小走りで颯人に追いつくと翼を抱き上げて歩いている彼の身を支える様にその肩に手を添え彼が弦十郎に翼を渡すのを手伝った。

 翼は了子が呼んだ救護班の車両に、残りは全員揃って弦十郎が乗ってきた車に乗って病院に向かうのだった。




***




 車で自衛隊病院に運ばれた4人の内、颯人と翼は即行で手術室に放り込まれた。翼は勿論だが、我慢していただけで颯人も重症だったのだ。

 当初、颯人は強がり何てことはない風を装っていたのだが、それを見抜いていた奏が彼の透に蹴られた方の脇腹を軽く小突くと言い逃れできないほど顔色を悪くしたので、弦十郎の手により強制的に放り込まれたのである。

 奏と響も念の為検査を受けたが、2人は比較的軽傷で済んでいたので早々に解放され今はロビーのソファーに並んで座っている。
 言うまでもないが、その表情はどちらも暗い。

 奏は折角力を手に入れたにもかかわらず、またしても目の前で自分の周りの者を失いそうになった不甲斐なさ故に。

 響は、大した役にも立てず翼や颯人に守られてばかりだったが為に。

 互いに己の力不足に思い悩む2人。先に口を開いたのは響の方だった。

「奏さん……」
「うん?」
「私…………悔しいです。何も出来なかったことが……翼さんや、颯人さんに守られてばかりの弱い自分が、情けないです」
「そうだね…………あたしもだよ、響」

 そっと奏の肩に寄りかかる響。
 奏はそれを振り払うことはせず、逆に響の肩を抱いた。その肩は震えており、響の口からは次第に嗚咽が零れ出した。響の嗚咽を耳にして、奏は彼女の頭を優しく撫でる。

 それにより心のダムが決壊したのか、響は奏に縋りつくように抱き着いて涙を流した。

「奏さん、私……強くなりたいです!? 皆を助けられるように……足手纏いにならないように──!?」
「あぁ、そうだね響。強くなろう…………強く」

 そう、強くならねばならない。その為に死に掛けてまで力を手にしたのだ。強くなって、もう2度と奪われないようにしなければ。

 涙を流す響きを慰めながら、奏は改めて強くなることを固く誓うのだった。
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