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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第20話:一矢は報いる意志
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 そしてその代償として、彼はウィズの必殺の一撃をその身に喰らう事になる。

「透ッ!?」

 為す術なく蹴り飛ばされた透は、飛んでいった先にある木をへし折り地面に倒れる。
 そこで限界が来たのか、変身を維持できなくなり元の姿に戻った。

 俯せの状態で倒れているので顔などは見えないが、背格好からクリスや響と大体同年代の少年であろうことが伺える。

 クリスは適合係数が下がった所為ギアで重くなった体を引きずりながら、倒れた透の元へと向かおうとする。

 それよりも早くに、ウィズが透に方へと向かっていく。クリスはそれを阻止しようとするが、アームドギアも構えることのできない装者など敵ではないと言わんばかりに完全に無視して透へと近付いていく。

 と、彼がある程度近付いたところで透がその場で立ち上がった。

 まだ立ち上がるだけの余裕はあるらしい。その事にウィズは若干驚いた様子を見せる。

「ッ! ほぉ、まだ立つのか? 直撃した筈だが…………ッ!?」

 透のガッツにウィズが舌を巻いていると、彼は次の瞬間透のとった行動に思わず息を呑んだ。

〈コネクト、ナーウ〉

 コネクトの魔法でライドスクレイパーを取り出すと、ウィズに向けて構えて抗戦の意思を見せたのだ。それと同時に再び変身しようとしたが、既に魔力の方が変身できるほど残ってはいなかったのかベルトは〈エラー〉と鳴るだけで何の変化も起こらなかった。
 透はその事に悔し気に顔を顰めると、気を取り直して槍を構えた。全身ボロボロ、口の端は切れ血が流れており足元もふらついている。とてもではないが戦える状態とは言えなかった。

 だがしかし、その目は未だに闘争心を滾らせていた。体はボロボロなのに、心は微塵も退く気配を見せていないのである。
 しかも彼は、ゆっくりとだがクリスの方へと近付いて行っている。こんな状態でも彼女を守ろうとしているのだ。

 その透の姿に、ウィズは舌を巻いていた。

──凄いものだな。まさかこんな所でこんな者に出会えるとは──

 ウィズが特に気に入ったのは彼の目だ。圧倒的強者を前にして、一歩も退かず徹底抗戦の意思を見せるほどの者はここ最近見た覚えがなかった。しかもそれが何者かに強制されたものではなく、完全に己の意思によるものとは。

 同時に注意すべきでもある。
 ああいう輩は、最期の瞬間まで絶対に諦めると言う事をしないのだ。例え差し違えることになろうとも、いや差し違える事が出来ずとも一矢は報いようとする。
 それは決して馬鹿にできるものではなく、時に手痛いでは済まない被害を受ける事すらあった。

 ウィズは長い人生の中でそれを知っている為、満身創痍になりながらも徹底抗戦の意思を見せる透に対し最大限の警戒を向けた。


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