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その日、全てが始まった
第2章:奔走
第8話 『不穏の予感』
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か?」
「駅からだと……歩いて十数分ってところね」

 ふーん、と洸夜は頷いた。
 そして歩く事10分弱。

「ここです」

 そう言って少女は、1つの建物の前で立ち止まった。

「じゃあ、ここまでで良いですね」
「ええ。本当にありがとうございました」
「いいえ。では、自分はこれで失礼します」

 そう言って洸夜は踵を返す。
 そして、懐から携帯を取り出す。

「……はぁ!?」

 その直後、彼は驚愕の声を上げた。

「ど、どうかしました?」
「あ、いえその……」

 洸夜は、少し言葉を濁した後に打ち明けた。

「さっき乗ってきた路線……人身事故で止まっちゃったんですよ……」
「え、そうなんですか?」
「みたいです……。これじゃ行きたいとこに行けそうにないな……」

 そう言って、洸夜は落胆するのであった。
 そんな洸夜を見た少女はこんな事を言うだった。

「その、この後お時間ってありますか?」
「え、あ、はい。一応ありますが」
「私、この芸能事務所に入ってるんですが、御礼の代わりというのは何ですが、宜しければ見学して行きませんか?」
「え、え……?」

 あまりの状況に、洸夜はテンパるのだった。

「え、えっと……先ず、芸能人の方なんですよね?」
「ええ。ここの事務所に所属してます」
「で、ええっと……その、活動の様子を見せていただけると?」
「はい」

 洸夜はその申し出に対して悩むのであった。

「その、本当に見せて貰っちゃって大丈夫なんですか?」

 その言葉に、目の前の少女は頷いた。

「なら、折角ですし見せて貰いたいです」
「分かりました」

 そう答えると、洸夜は少女と共に建物の中へと入った。
 そして、少女が受付と思しき人に何かを話した後、その奥へと通される。

「……本当に入れたよ」

 洸夜は、誰にとなくそんな事を呟く。

「半分位疑ってましたね?」
「正直なところ……はい」

 そう言って洸夜は、少し申し訳なさそうにするのであった。
 その直後、廊下を歩いていた彼は不意に足を止め、キョロキョロと辺りを見渡し始める。

「……どうかしました?」
「なんか、嫌な予感がしたので……」

 すると、何処からともなくドタドタという音が近づいてきた。

「……?」

 その音が自身の背後から近づいて来ることに気が付いた洸夜は、即座に振り返る。
 瞬間、彼に少し強めの衝撃が走る。

「とわッ……」

 咄嗟の事でよろけてしまう洸夜だったが、何とかその場に踏みとどまった。

「やっぱりそうだった!」
「???え、日菜?」

 そんな彼の視界に映ったのは、紛れもない下の妹(日菜)だった。
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