第2章:奔走
第8話 『不穏の予感』
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り声で叫ぶのだった。
「どれだけ努力をしても抜くこともできず、何か新しいことをすれば後から始めて直ぐに追い越される! それを幾度となく繰り返される気持ちが!」
そして紗夜は、こう言うのであった。
「今の私には???ギターしかないのよ!」
2人のみの空間内で反響する紗夜の声。
それが止むと、辺りは静寂に包まれた。
「……本当に、ギターだけなのか?」
すると、静寂を断ち切る様に洸夜が紗夜に投げかけた。
「お前に残されてるのは、ギターしかないのか?」
「そうよ! ……でも、それもあの子が……日菜が……また持っていってしまう……」
そう言った紗夜の瞳には、涙が浮かんでいた。
対する洸夜は、『そうか』とだけ呟いてから、紗夜にこう返すのであった。
「今のお前じゃ???頂点なんか目指せ無いな」
そう告げた洸夜の眼差しは、先程までの真剣なものではなくとても冷たいものであった。
「困難に立ち向かうのではなく、否定して逃げるような奴は絶対上には行けない。今のお前は、正しくそれだ」
そして洸夜は、極め付けにこう言った。
「???ギター、やめた方がいいぞ」
その言葉の直後、パンッと乾いた音が木霊した。
同時に、洸夜の頬に鈍い痛みが走った。
紗夜は無意識の内に、平手打ちを洸夜へと行っていた。
「……ッ?!」
我に帰った紗夜は、自身の咄嗟の行動に戦慄していた。
「悪い……言い過ぎた」
対する洸夜は、平手打ちの反動で顔を右側へと向けたままでいたが、自身の左頬を抑えると、紗夜に対して謝罪するのであった。
その傍らの紗夜は、自身の起こしてしまった新たな過ちが故、彼女の潤んだ双眸から涙を零すのであった。
「……紗夜……ごめん」
洸夜は、紗夜の震える身体を自身の方へと引き寄せると、そのままそっと抱き締めるのであった。
「……ウウッ……アアッ」
抱き締められると同時に、紗夜は声を上げて泣き始めるのだった。
彼の胸に、自身の顔を深く埋め。
洸夜も、そんな彼女を受け入れ抱く力を少し強める。
そして、彼もまた静かにではあるが涙を流すのだった。
そんな感じで対照的に涙を流し続ける2人は、10分程その状態であった。
その後、双方が落ち着いたところで2人はベッドに腰をかけた。
そして紗夜は、今日あった事を洸夜に打ち明けた。
「……そうだったのか」
紗夜の口から聞いた事象に、洸夜はそう呟くのであった。
「私は……どうしたら良いのかしら」
そう言った紗夜は、顔を俯けた。
そんな紗夜に対して洸夜は、こう言葉を返すのであった。
「???それは、紗夜自身が決めないといけない事だ」
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