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その日、全てが始まった
第2章:奔走
第8話 『不穏の予感』
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 洸夜は鍵の掛けられている扉越しに、再びそう問い掛けるのであった。
 そこで漸く、紗夜は応答するのであった。

「……なんの用? 放っておいて欲しいのだけれど」
「何があったんだ?」

 紗夜から放たれた冷たい言葉に動じること無く、洸夜はそう言葉を紡いだ。

「なんでも良いでしょ?」
「なんでも良くない。お前がそうやって閉じ籠ることは、放っておけることじゃない」

 そう言って、洸夜はこう続ける。

「???粗方、日菜のことだろ?」
「……ッ?!」

 ほぼほぼの核心を突かれた紗夜は、動揺した。
 洸夜は、紗夜が動揺していることを知りながらも続ける。

「今のお前がどうしてそんなに悩んでいるのかの理由も、何と無くだが把握してる」
「……それを知っているからって、どうにかなるのかしら? ならないでしょ?」

 紗夜は強めの口調で、洸夜に言葉を飛ばした。
 そして、極め付けの言葉を放つのだった。

「???だからもう、放っておいて欲しいの」

 そう言葉をぶつけ、洸夜を冷たく突き放すのだった。
 対する洸夜は『そうか』とだけ返し、紗夜の部屋の前から去るのだった。
 そして、扉の向こう側から、別の扉が閉まる音が紗夜の耳に届いた。
 暫くの間、彼女の部屋は静寂が支配する状況に変わる。

「兄さんに……何が分かるの……」

 静寂を断ち切るかの様に紗夜は、涙ぐんだ声でこの場に居ない洸夜に対しての言葉を(こぼ)すのだった。

「???そうだな。今のお前の気持ちは分からないな」

 この場で聞こえるはずの無い声で、突如として返された言葉に紗夜は思わず顔を上げた。

「お前が話してくれなきゃ、な」

 視線の先に立っていたのは、先程まで扉越しに会話をしていた筈の洸夜であった。

「い、一体何処から……!」
「そこ。空きっぱだったから入れた。籠るんだったら、ああ言うところの鍵も確認した方がいいぞ」

 そう言った洸夜は、自身の背面側にある窓を親指で示すのだった。

「んで、なにがあった」
「……知って、いるのでしょ?」

 立ち上がりそう言った紗夜は、俯いたまま両手を強く握っていた。
 その両手は、絶え間無く震えていた。

「……紗夜の口から本当の事を聞きたい」

 洸夜は、真剣な眼差しで紗夜へと告げた。

「それで……私から聞いて……何になるの……」
「俺が、全てを知ることができる」

 途切れ途切れに紡がれた紗夜の質問に、洸夜は即答するのだった。
 そして、こう続けるのであった。

「そうすれば???少しぐらいだろうが、紗夜の力になってやれるかもしれない」
「貴方に……貴方に何が分かるのよ!」

 洸夜が言い切った直後、紗夜が金切
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