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その日、全てが始まった
第2章:奔走
第8話 『不穏の予感』
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け言って、洸夜は店を出た。
 そして、足早に家へと向かう。

「あ、洸夜?」

 そんな彼は、途中で背後から声をかけられた。
 洸夜は立ち止まると、聞き慣れたその声の方へと振り返る。

「リサ……と湊か」
「こんなところで何をしているの?」
「ギターが壊れたから修理に行ってた」

 友希那に問われた洸夜は、自身の背面に背負ったギターケースを示しながらそう告げた。

「洸夜のギター?」
「ああ。1年ぐらい触ってなかったけどな」

 と言った洸夜は、リサの少しばかり浮かない表情に気付き、2人にこう尋ねるのだった。

「そういえば、2人はなんかあったのか?」
「どうして?」
「なんか、沈んでるように見えたから」

 首を傾げる友希那に対して、洸夜はリサの方を示しながらそう答えた。

「うん……少しね……」
「何があった?」
「実は……」

 そう言って、リサは先程起こった出来事を話すのだった。

「紗夜が、突然怒り出して……」
「な、なんでまた……?」
「日菜の事で……」

 それを聞いた瞬間、彼の予感は確信へと変わっていた。

「そうか……。それで、紗夜はどうしたんだ?」
「帰らせたわ」

 そして友希那は、こう続けるのだった。

「???Roselia(私達)に、私情はいらない」

 そう告げた友希那は、何処となく冷徹さを纏っていた。

「そうか」

 洸夜はそれだけ言うと、2人に背を向ける。

「どうかしたの?」
「悪い、急用だ」

 それだけ告げると、洸夜はギターケースを背負い直し走り出した。
「手遅れになる前に……!」と呟きながら、自宅を目指して???





 帰宅した紗夜は、自室に籠もっていた。
 ベッドの上で体育座りをした状態で蹲り、様々なことで思考を巡らせながら。
 あこ達の前で突然怒ってしまったこと、友希那に言われたこと、そして何より???ポスターに写っていた日菜のこと。
 この時の紗夜は、思考の対象となっていたそれらが自身では受けきれない程のモノ(・・)となって、彼女に伸し掛かっていた。

 ???この先自分はどうしたら良いのか。
 その答えが出せない状況が、家への帰り道から今に至るまで続いたままだった。
 同時に、この感情(思い)をどこに向ければ良いのかも分から無いでいた。
 すると不意に部屋の扉がノックされ、自信を呼ぶ(洸夜)の声が聞こえてきた。

「紗夜、いるか?」

 それにより、僅かに顔を上げる紗夜だったがすぐにまた蹲り、沈黙したままでいた。

「入るぞ?」

 洸夜はそう告げ扉のノブに手を掛け開けようとしたが、その扉が開くことは無かった。

「紗夜、いるのか?」

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