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ペルソナ3 ゆかりっちのパニックデート
後編
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桶でぎゅうぎゅう詰めの車内に1時間も閉じ込められるなんて、想像しただけで寒気がする。
疲れ切った状態で、寮への道筋をとぼとぼと歩く。
「もう今日はさんざんだったわ。ごめんねー、せっかく付き合ってもらったのにこんなことになって・・・。」
ゆかり は泣きたい気分で彼にそうこぼした。
(あれだけ楽しみにしていたのに・・・。素敵なデートをして、できることならもっと親密な仲に・・・とか期待してたのに・・・。)
夢のデートが、予想外の事態の連続でぐだぐだになってしまった。つきあってくれた彼にも申し訳が立たない。
「そう? 僕は楽しかったけど・・・」
落胆する ゆかり に、彼は平然とそう答えた。
ゆかり は思わず彼の顔に眼を向ける。
普段、表情に乏しい彼が、めずらしいことにおどけた顔をしてみせた。
「人ってさ。みんな違うことを考えて、それぞれ勝手に行動しているでしょ。だからこそ思いがけない偶然で、いろんな人といろんな場所で出会う。」
何を言われているのかわからず、ゆかり はきょとんとする。
「わざわざ地元じゃなくて新宿まで行ったのに、電車に乗れば無達さんいて、レストランに行けば社長と会うし、映画館には順平たちがいる。」
「気づいてたの?」
ゆかり はあっけに取られた。それに対して彼は片目をつぶって見せた。
「現実って、時に予想を超える展開をするよね。これってすごく面白いと思う。いや、面白いと思うようになったんだよ。ここへ来て、みんなと出会ってから。」
いつも言葉少ない彼が饒舌に語っている。
気落ちしている ゆかり を元気づけようとしてくれているのだ、ということに気づいた。
「映画だってそうさ。岳羽に誘ってもらわなければ知りもしなかった映画だった。でも観てみたら海外で作られたのに、妙にうちのメンバーに似た人がいっぱい出てて・・・偶然っていえばそれまでだけど、これって面白いと思わない?」
「そりゃあ、まあ・・・笑い話としてはね。」
(笑い話としては面白い。普段の私なら笑い飛ばしていただろう。でも・・・私は初デートを笑い話にしたかったわけじゃない。)
そんな様子の ゆかり にかまわず、彼は話し続ける。
「こんな面白いことでも一人で体験してたらそこまでだけど、誰かと一緒に共有できれば、面白かったねって笑い合うことができる。それって楽しいことだと思うんだ。だから今日は岳羽と一緒にいてとても楽しかった。」
彼が笑いかけてきた。
「今日は誘ってくれてありがとう。」
めったに見せることの無い、会心の笑顔だった。その笑顔が落ち込んでいた ゆかり のハートを直撃した。
(うわっ、クリティカルヒットだ。)
ゆかり の心臓が高鳴った。
(えっ、これってもしかしてそういう展開? なんだか全然思い通りにならなかったデートだけど、今ここがクライ
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