後編
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んか、全然話に集中できなかった・・・)
エンディングテーマが流れる中、ゆかり はぐったりしていた。
ポップコーンは手つかずのままだった。
「緊迫感があって、なかなか面白い映画だったね。どんでん返しの展開も良かった。」
駅のホームで電車を待ちつつ、彼が感想を言った。
「ソレハ良カッタデスネー。」
ゆかり は感情のこもらない声でそう返した。
「なんで棒読み?」
彼が不思議そうに聞いて来る。ゆかり は眉をひそめて彼を見返した。
「まあ、映画としては良くできてたかも、だけど・・・なんだか、上司の人が幾月さんみたいだなって思って・・・」
「ああ、それ・・・僕もそう思った。」
彼が大きくうなずく。
「そうしたら女の先輩が桐条先輩に・・・ボクシング男が真田さんに見えてきて・・・」
「確かに・・・」
彼がうん、うん、と繰り返しうなずく。
「そしたらもう、他の人もみんな誰かに見えてきちゃって・・・せっかくのサスペンス映画なのになんだかコメディみたいに見えてちゃって・・・ゆっくり映画鑑賞なんかできなかった。」
さすがに主人公カップルが、自分と彼に重なったことまでは口にできない。
「ああ、なるほど。でも、それはそれとして面白いんじゃない。」
ぼやく ゆかり に、彼はすましてそう言った。
電車はなかなか来ない。ホームは人でいっぱいになってきた。
「だってさ、狙ったみたいにみんなそっくりなんだもん。話に集中できないよ。まあ、さすがにロボットのアイギスまでは出てこなかったけどね。」
ゆかり の言葉に、彼が意味ありげな笑みを浮かべた。
それが気になって「なに?」と聞き返す。
「映画の佳境で、『イージス作戦』って出てきたでしょ。」
笑いをこらえるように彼が言った。
「うん。」
「アイギスはラテン語。英語読みだとイージスになるんだよ。」
「やめてよー。」
ゆかり は思わず頭を抱えた。
(これ、ほんとに誰かにからかわれてるんじゃないの〜。)
その頃にはもう、ホームは電車を待つ人でぎっしりの状態だった。
人に押されてなんだか様子がおかしいと気づいたとき、駅のアナウンスが流れた。
『お忙しいところお待たせしております。線路内に人が立ち入ったという報告があり、現在確認中です。』
電車が遅れたために、車内は混み合ってぎゅうぎゅう詰めの状態だった。
やっとの思いで磐戸台駅にたどり着いたときには、既に12時になっていた。駅を出もしないうちに影時間に入る。照明が消え、静寂が訪れた。周りには多数の棺が不気味に立っている。月あかりだけが不自然に明るい。
(ホントに素敵なデートだこと・・・)
ゆかり はため息をついた。
「車内で影時間にならなくて良かったよね。」
彼の言葉にも、ただ力なくうなずくことしかできなかった。
この上、棺
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