後編
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かに遠吠えが響き渡った。
突如、目の前に三つ首の巨大な獣が出現し、シャドウの前に立ちふさがった。
地獄の番犬『ケルベロス』。
三つの口が大きく開かれると、その口からまばゆい業火が放たれ瞬く間にシャドウを焼き尽くす。
シャドウは黒い塵となって消滅し、・・・そしてあたりに静寂が戻った。
気づけばいつの間にか『ケルベロス』は静かに姿を消し、そして倒れたままの天田の顔を、暖かくて湿った舌が舐めてきた。
「コロマル・・・」
心配そうに覗き込んでくるその犬を見て、天田が茫然とつぶやく。
『ケルベロス』はコロマルのペルソナだ。
コロマルは犬でありながらペルソナを使う・・・特別課外活動部の大切な仲間なのだ。
今夜、天田が外泊することは特別課外活動部のメンバーには伝えられていた。しかしコロマルにはそれが理解できていなかった。夜になっても一向に戻らない天田を心配して、コロマルは寮を抜け出した。いつも天田と散歩するコースを必死に探し周り、ついに長鳴神社で天田のにおいを嗅ぎつけた。
そして天田がシャドウと戦闘に入り、正に危機一髪というところに駆けつけてきたのだった。
「お前・・・来てくれたんだ。ありがとう。」
天田はようやくしびれの取れてきた腕で、コロマルを抱きしめる。
嬉しくて涙が込み上げてきた。
コロマルも嬉しそうに「ワン!」と吼えた。
家に戻ると、菜々子は布団の中で象徴化して棺となっていた。結局、菜々子はペルソナ能力者というわけではなかったようだ。
普通の人でも、ごくまれに特殊な状況下で影時間に覚醒する例はある。かつて山岸風花の友人が、影時間に覚醒してタルタロスに駆けつけたこともあったと聞いている。
今回の場合、天田が隣で寝ていたことが、菜々子に何らかの影響を与えた可能性もある。
待つほどのこともなく影時間が終わり、菜々子の象徴化も解けた。菜々子はすやすやと寝息をたてていた。それを見て、天田はほっと胸をなでおろした。
その後、天田は菜々子の母親とおじさんを起こし、「夜中に目が覚めたら玄関が開けっぱなしになっていて、外に出て見たらおばさんが道路に倒れているのを見つけた。」と告げた。すぐに救急車が呼ばれて、おばさんが病院に運ばれる騒ぎとなった。
折れた物干し竿はどさくさにまぎれて近くの共同のゴミ置き場に移しておいた。
翌朝、目を覚ました菜々子は、浮かない顔で、天田に怖い夢を見たと言ってきた。しかし、庭にいるコロマルを見つけると大喜びで外に飛び出していき、そのまま夢のことはすっかり忘れてしまったようだった。
数日後のこと。
山岸風花に呼ばれて寮の1階ホールに降りていくと、堂島親子が菓子折りを持って挨拶に来ていた。これから八十稲葉に帰るのだという。
病院に運ばれたおばさんは、その後 目に見えて順調に回復し、無気力症の症状も治ま
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